第27話

「無事か!?」


 聞こえてくる声。待ち望んでいた声。


「アーレス!」 

 

 その手に剣を握り、息も絶え絶えのアーレスが近づいてくる。


「良かった!後は任せろ!」


 アーレスの実に頼もしい言葉。

 流石は終焉騎士。人類の切り札、アンデッドに対する人類の最終兵器と言われているだけのことはある。


「任せたよ!あ、でも一体くらいなら受け持つよ」

 

 僕は四体をアーレスへと押し付け、一体と向き直る。

 一体くらいならなんとか出来る。

 

「『雷の──』」

 

 僕は切れかかっている強化魔法を再度自分に掛け直し、刀を構える。


「ほっ」

 

 僕は距離をつめ、刀を振るう。

 触手のようにうねるその腕、無限に再生してくるその腕を次々と斬り落とし、間合いを詰めていく。


「ほい。ここからは僕の間合い」

 

 遠距離戦だったら負ける。

 いくら僕が雷魔法で対抗しようとも、相手が僕の雷魔法よりも威力が高く、なおかつ早い触手の攻撃をしてくるんだからどうしようもない。

 だが、近距離戦なら勝てる。触手しかないこいつに近距離は向いていない。ムチのようにしなる触手を自由自在に扱えないしね。


「ほっ」

 

 触手を切り裂き、胴体を切り裂く。

 向こうが触手を一度振っている間に僕は刀を三回振る。


「これで終わりかな?」

 

 もはやサンドバックでしかないタコ足の化け物をひたすらに斬りつけていく。

 そろそろ体力が尽きてくると思うんだけど……。


「……」

 

 タコ足の化け物の体がゆっくりと倒れる。

 

「はぁはぁはぁ」

 

 どうやら体力を全て削りきれたようだ。……あぁ。疲れた。本当に大変だった。


「ハァ!!!」

 

 僕がアーレスの方へと視線を向けるとそこには最後の一体と思われるタコ足の化け物を真っ二つに斬り裂いているアーレスの姿が見えた。


「お?終わったかな?」

 

「あぁ」

 

 僕の言葉にアーレスは頷く。


「それで?他の奴らは全部倒したのかな?」


「あぁ。とりあえず俺が見つけられたやつは」

 

 僕の言葉にアーレスは頷く。

 見つけられた奴は、か。あの化け物からは気配を感じ取ることは出来ない。何処かに隠れている可能性も十分にあるわけだ。

 見つけられていない奴が一体くらい居ても不思議じゃない。

 

「んー」


 僕はボロボロになった国外酔街を見渡す。

 元々ボロボロだった国外酔街の街は更に被害を受けたせいでもう街と呼んでいいのか疑問に思うくらい悲惨な状態になっていた。

 人の住める家は何個あるんだ?

 ……というか子種を産み付けられていた女性はどうなるのだろうか?あのタコ足の化け物の子供をその身に宿したのだろうか?

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