第26話

「パルちゃん!」


「アウゼスくん!」

 

 僕はパルちゃんの元に辿り着く。

 どうやらパルちゃんは異空間収納に締まっていた様々な品々を使って時間稼ぎをしていたようだ。

 特に多いのは……死体だ。

 ……パルちゃんの異空間収納に入っていたあまりにも多すぎる死体の数々はタコ足の化け物に対する良い防波堤になっていた。

 死体に囲まれているパルちゃんとパルちゃんのお母さん。……うん。


「死体は閉まって良いよ?臭い」

 

 僕はパルちゃんに向かってそう告げる。……割と深刻に腐敗臭がヤバい。


「……え?」


「後は僕に任せて。大丈夫。ちゃんと守ってあげるから」

 

 僕はパルちゃんに向かって微笑みかける。


「はいです!」

 

 パルちゃんは僕の言葉に元気よく頷き、死体を全て異空間収納に仕舞う。

 他にも土とか、木とか、雑多なものとかも収納していく。

 

「……」

 

 ……死体だけで良かったよ?土とか、木とかを仕舞う必要はなかったよ。

 僕は内心でそんなことを思いながら刀を構える。

 さてはて。あんなに大言壮語したは良いけど、勝てるかどうか。

 僕は周りにいる5体のタコ足の化け物に視線を送る。タコ足の化け物は僕を見て動かない。

 

 ヒュンッ 

 

 タコ足の化け物の片腕が伸び、僕に向かって振るわれる。


「しっ」

 

 僕はそれを斬り裂く。切断能力に長けた刀であれば切断することくらい容易い。

 まぁ一瞬で再生しちゃうんだけど。


「くっ」

 

 僕は次々と振るわれるタコ足の化け物の触手を斬り落としていく。

 こいつらに知能がなくて、目の前にいる僕だけを狙ってくれるおかげで後ろにいるパルちゃんやパルちゃんのお母さんに攻撃が行かないのが唯一の救いだけど……!


「ふー」


 人間状態でこいつと戦いのは初めてだけど……きつすぎる!

 攻撃早いし、気配読めないし!化け物かよ!ありえない。


「ラァ!!!」


 僕は一気に触手を斬り落とし、前へ前へと押し進む。

 防御は一旦捨てだ。


「しっ!!!」

 

 刀を一振り。

 二振り。

 三振り。

 タコ足の化け物の首を切り落とす。


「……」


「ちっ」

 

 僕は舌打ちを一つ。

 首を落としていたのだが、それでも平然と動き出して再生し始める。

 吸血鬼状態ならHPを全て削りきり、再生をさせる暇もまもなく倒せるのだが……。


「ダメだな……」


 小さな声で僕は呟く。

 明らかに無理だ。どんなに頑張ってもこいつを倒せそうにない。

 時間稼ぎしていくスタイルで行こう。うん。そうしよう。


「ふー」


 剣術を変える。戦い方を変える。

 攻めの刀術から守りの刀術へと。

 僕はひたすらに触手を切り落とすことに専念する。


「無事か!?」


 待ち望んでいた声が聞こえてきた。

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