第25話

 僕とアーレスは全速力で走る。

 国外酔街へと向かって。


「良い!?僕は吸血鬼としての力を使って戦う事はできないッ!というかもうほとんど助かっている人はいないと思う!」

 

 ……パルちゃんだって死んでしまっている可能性もある。あの子は普通に弱いから。

 

「……お前が……ッ!」


「無理だよ」

 

 僕はアーレスの言葉を切り捨てる。

 国外酔街の人間の命に僕が吸血鬼であるという切り札を晒す価値はない。

 吸血鬼であるという情報は今のところ吸血鬼の一部と人間社会の一部のトップしか知らないのだ。

 漏れしたくはない。漏れたら僕が動きにくくなってしまう。

 勇者たちとのコネは国外酔街の人間の命、パルちゃんの命よりも重い。

 

「……くっ!」

 

 アーレスは僕から視線を外し、速度を飛ばした。

 吸血鬼である僕も、終焉騎士であるアーレスも。その移動速度は異次元の一言である。

 10秒もかけずに国外酔街へと辿り着く。

 

「束縛結界」

 

 吸血鬼として力を封じる。念の為だ。

 鼻がもげるような強烈な腐敗臭が僕に襲いかかり、吐き気を遠慮なく引き出してくる。


「あ……」

 

 絶句する。

 アーレスが。

 国外酔街の現状を見て。

 暴れていたタコ足の化け物が。

 タコ足の化け物が男たちへとその大きな触手を振るい、叩き潰し、そして女性たちには──────

 

 種を産み付けていた。

 

 タコ足の化け物の体が赤く黒い液体へ変化していて、その体から数多の触手が伸びていて、女性へとまとわりついている。


 ガチの触手プレイだ。バリバリのR18の。


 エロい要素はない。体を貫くのではないかと疑いたくなるほどの大きな触手が女性の股を貫いている。股からは愛液の代わりに真っ赤な血を流している。

 女性たちは目からは涙を流して、白目をむき、口からはゲロやらよだれやらを撒き散らし、体を汚している。

 地獄よりもひどい国外酔街が更にひどい状態へと成り果ててしまっていた。

 タコ足の化け物たちの視線がいきなり現れたこちらの方へと移る。

 そして、僕たちに向かって触手が振るわれる。

 

「僕がパルちゃんのところ行くからここは任せたよ!」

 

 僕は人間状態のあまりにも遅い速度で、気配を隠して移動を開始する。

 全ての触手による攻撃を弾き、瞳から涙を流して憤怒の表情を浮かべているアーレスをその場に置いて。

 奔放の二つ名の通り、自分の思うがままにその怒りを撒き散らすアーレスを置いて。


「のっと……見えた。お?無事じゃん」

 

 僕は未だにタコ足の化け物に犯されていないパルちゃんとパルちゃんの母親を見て驚きの声を上げた。

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