第23話
意味がわからない。
「クソがッ」
僕は慌てて回避する。
タコ足の化け物のうちの一体から伸びてきた触手を。
……なぜ!?なぜこいつらが僕に向かって攻撃してくる!?いや、出来る!?
「ラァ!」
僕は急いで魔法を発動させる。
タコ足の化け物に向けた手のひらから雷鳴が轟き、タコ足の化け物の一体を確実に黒焦げにする。よし。攻撃自体はちゃんと通っている。
「アーレス!戦うよ!なぜかは知らないけどこいつら僕にも平然と牙を剥けてくる」
「まぁ任せろ。それくらいなら俺にもできらぁ」
アーレスが異空間収納から剣を取り出す。
戦闘モードに成り、悩みとか一旦置いてきたのか、いつもの、奔放の二つ名に相応しいふてぶてしさが、浮浪の男感が戻ってくる。
「ふふふ。飼い主に逆らったことを後悔させてあげるよ」
僕は記憶の中から妖刀を再現し、構えることもなく突っ込んだ。
タコ足の化け物。
その体から繰り出される数多の触手による攻撃。手数も、速度も、威力もそこそこだ。普通の人間相手になら十分に通用するどころか、一体でも100人単位を相手取りあっさり勝利できるだろう。
そんな化け物が24体。小国くらいなら楽に壊滅させられるであろう戦力。
だが、今この場に立っているのは吸血鬼たる僕と終焉騎士であり、人類最高戦力の一角であると言える男だ。
こいつら程度じゃ相手にならない。
蹂躙劇。
タコ足の汚い血と僕が操る汚れた血が踊り、アーレスの聖なる力を一部宿した剣が全てを切り捨てんと振るわれる。
殲滅はさほど時間もかからずに終わる。
「よっと」
なんか知らないけど他の奴よりも触手の手数も、速さも、威力も段ちと言えるくらいの強さを持っていたタコ足の化け物。
最後の一体を妖刀で切り裂く。
「ふー」
ドサリと地面に倒れたタコ足の化け物を横目に妖刀を手から離し、落ちる。
地面へと、僕の影へと落ちた妖刀はそのまま呑み込まれ、沈んでいく。
アーレスも異空間収納へと自分の剣を閉まっている。
「じゃあ帰るか」
パルちゃんとパルちゃんのお母さんが待っている国外酔街のボロボロの小屋へと帰ろうとしたその時。
声が聞こえてきた。
「……マ、テ…」
キェェェェェェアァァァァァァシャァべッタァァァァァァァ!!
僕はちょっと言ってみたかったあの伝説の言葉を心の中で叫んだ。
前世のこととか他者のあまりにも多すぎる記憶と悪感情で流され、忘れてしまったけどこんな下らないことはなぜか覚えていた。
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