第22話
「ふぅー。美味しかった……アーレスってば料理できるんだね」
僕は無言で黙々と箸を進めているアーレスへと視線を送る。
「……」
……何を悩んでいるんだが。終焉騎士であり、そこそこの強さを持っているこいつが潰れちゃうのはあまり好ましくないんだけど……。
「……久しぶりにしっかりと食べるわね」
「ちゃんと食べれますか?」
「えぇ。ありがと」
僕とアーレスの前で母娘。家族団らんを楽しんでいる。
そんな様子を僕は特に何も思うこと無くぼーっと眺める。
「……っ!?」
そんな中。
突如。僕は何かを感じた。底しれない何かを。
「どうしたんだ?」
僕の動揺。アーレスはそれを悟れないほど鈍感じゃない。例え心のなかに何か悩みを抱えていたとしても、だ。
「ちょっと用事を思い出したから、席を外すね」
僕は立ち上がり、アーレスへと視線を送る。殺気を込めた視線を。
「……俺もだ」
それを受けてアーレスも立ち上がる。
「はい!わかりました」
パルちゃんは僕の言葉を聞いて元気良く頷く。……うん。いい子だ。
「じゃあ、ちょっとね」
僕はボロボロの小屋を後にする。
「……どうしたんだ?一体?なんでいきなり俺に殺気を込めた視線を?」」
そんな僕の後をついてきたアーレスが尋ねてくる。
「何か来るよ。そんな気がした。吸血鬼としての感だよ」
僕はアーレスに向かってそう告げ、走り出す。
あくまで人間レベルに速度を抑えて。
無いも当然の国外酔街の柵を走り抜け、森の方へと走っていく。
「……は?」
そんな中たどり着いた一つの場所。見えてきたものに僕は困惑の声を上げる。
「なぜ?」
僕の隣でアーレスも驚いている。
そこにいたもの。
それは化け物。
王都で見かけ、いきなり襲いかかってきたタコ足の化け物たちだった。ひとりじゃない。
何故かそいつらが僕らの前に立っていた。
なぜこいつらが僕の前にいるのかはわからない。……それに敵がこいつらなのだとしたらなぜ僕は気配を感じ取れた?疑問は尽きない。
だけど、こいつらなのであれば好都合だ。
これらは吸血鬼の眷属。僕に逆らうことは出来ない。
「『我は闇の王、死の王、吸血鬼が一柱。跪け。王の元に』」
「うっ」
僕はわかりやすいように吸血鬼としての力を見せつける。いつもなら絶対に使わない血の翼まで展開してやる。
終焉騎士ですらのけぞらせるこれ以上無いくらいの死のオーラと血の操作。僕が吸血鬼であることの証明は完璧に出来たであろう。
だがしかし───────
「は?」
タコ足の化け物、吸血鬼の眷属は僕に向かって触手を振るってきた。
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