第21話
「もっと火力を上げてください!」
「あぁ」
パルちゃんの言葉。
それを聞いてアーレスは魔法によって生み出された炎の火力を上げる。
パルちゃんとアーレスは今。
夜ご飯を作っているのだ。
そんな二人の様子を僕とパルちゃんのお母さんはともに眺めている。
「……ありがとうございます」
「はい?」
僕は突然お礼を告げたパルちゃんのお母さんに首を傾げる。
「あの子。ずっと不安がっていたんです。……自分が王都にいって馴染めるのかどうか。あの子はあんな感じでいつも明るくて、元気で少し馬鹿っぽいんですけど……頭は良いんです。あぁ見えて一人で悩んで抱え込んでしまうタイプなんです。だから、安心したと思うんです。自分と同じような人がいて」
……なるほど。
パルちゃんの僕に対する好意が他の人よりも高かったのはそういうことなのだろう。
「……私のせいであの子には苦労させましたから……。本当にありがとうございます」
パルちゃんのお母さんが僕に向かって深々と頭を下げる。
「すみません」
「はい」
「もしよろしければ僕たちと一緒に王都の方に来ませんか?眠る場所も、食事も出せますよ。冒険者としてそこそこお金を稼いでいるので。それに、パルちゃんの友達には貴族の方々や外国の王様までいますから」
最悪。
最悪僕がベルモンドになんとかするように頼めばなんとかしてくれるだろう。ベルモンドも人間なので、吸血鬼である僕を忌み嫌ってはいるものの僕の有能性は誰よりも理解している男だ。
それくらいなら動いてくれるだろう。……それにパルちゃんはおそらく……。
「いえ……そういうわけには……学園には寮があると聞いていますし……」
「あぁ。学校の寮は……有料なんですよね」
僕は遠い視線を浮かべる。
「ちょっと高くて払えなくて……」
貴族であるガンクスやニーナには簡単に払える額だが、身寄りのない僕やパルちゃんなんかは寮から追い出されてしまっている。無料だったのは最初の一ヶ月だけだったのだ。……マジでひどい制度だ。血も涙も無い。まぁ身寄りのないゴミを排除するための制度だから血も涙もないんだけど。
「ですから今はパルちゃんと僕で一つの家を借りて住んでいるんですよ。そこにパルちゃんのお母さんが来るくらいは全然平気ですよ」
「……そう、ですか」
僕の言葉に対してパルちゃんのお母さんにためらいの感情を見せてくる。
「私は……」
「出来たよー!」
返答を聞くよりも前にパルちゃんの元気な声が聞こえてきた。
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