第20話
「ここです!」
「へぇー。ここがパルちゃんの家か」
一軒のボロ小屋の前に僕たちは立つ。
「はいです!ただいま帰りましたー!!!」
パルちゃんがボロ小屋の中に入っていく。
玄関の扉なんて言う御大層なものはない。意気揚々とボロ小屋の中に入っていくパルちゃんの後を僕とアーレスはついていく。
「おかえりなさい」
壁の向こう側。ちょうど外からギリギリ見えないところ。布団の上で体を起こしている女性が僕たちに向けて笑顔を向けている。
ガリガリにやせ細り、傷だらけの体。生気は普通の人間よりもアンデッドに近い。
しかし、それでも美しい顔立ちということはわかるし、洗われていない汚い体でもその美しさに陰りの一つもない。
僕の横に立っているアーレスがそんな女性の姿を見て複雑そうな表情を浮かべている。
「お母さん!」
パルちゃんがその女性、パルちゃんに抱きつく。
「はい。久しぶりね。パル。元気にしていたかしら?」
「はいです!」
「それは良かった。……アーレスさんはお久しぶりですね。そしてあなたは……?」
パルちゃんのお母さんが僕に視線を向けてくる。
……アーレスはなんとも言えない表情で黙り込んでいる。……何をしているんだか。
「あ、どうも。初めまして。僕はアウゼス。パルちゃんのクラスメートです」
「……クラスメートっ!」
僕の一言にパルちゃんのお母さんは驚愕の表情を浮かべる。
「こんな薄汚いところで申し訳ありません……」
「大丈夫ですよ。僕もこの国の人間じゃありませんので。それなりの修羅場はくぐり抜けているつもりです」
戦場とかね。
「……なるほど。そういうことでしたか。……うちのパルと仲良くして頂きありがとうございます」
「いえいえ。こちらもよくパルちゃんに助けられていますので」
「アウゼスくんはすごいんですよ!」
「そうなの……それで。うちのパルは学園でちゃんと生活出来ていますでしょうか?」
パルちゃんのお母さんはためらいがちに僕に尋ねてくる。
「はい。問題ありません。僕を始めたくさんの友達がいますから。ちゃんと楽しく学園生活を送っていると思いますよ。それにですね。パルちゃんの持っている異空間収納は規格外ですから。……異世界収納の精度を見るのならば世界で一番でしょう」
「……そうですか。それは良かったです」
僕とパルちゃんのお母さんは三者面談のときの親と先生みたいな会話を交わしている。……親、か。
「異空間収納にたくさんご飯入れてきているのです!私が作ってあげます!」
パルちゃんが意気揚々と立ち上がってそう宣言した。
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