第18話

「パルちゃん。起きて。着いたよ」

 

 僕はパルちゃんの頬を叩き、起こす。


「ん、ふわぁ。わふー」

 

 まだ寝ぼけているようだ。


「はぁー。よっこいしょ」

 

 僕は未だに寝ぼけているパルちゃんをおんぶして持ち上げる。

 そんな様子を少し離れたところで飛龍を撫でているアーレスがなんとも言えないような表情で僕を眺めている。


「行くぞ」


「ん」


 僕はアーレスの言葉に頷く。

 いきなり国外酔街に飛龍で行ったら大パニックになること間違いなしなので、少し離れたところで飛龍から降りて少し離れたところから近づくことになる。


「……んぅ。おはようです……」

 

 僕の背中の上でパルちゃんが呟く。


「お?起きた?……パルちゃん自分の足で歩いてね?


「……このままお願いするのですー」


「嫌だよ」

 

 僕はパルちゃんを背中から下ろす。


「うぅー」

 

 未だ眠そうなパルちゃんの手を引いて僕は歩く。

 

 しばらく。

 しばらく歩き、アーレスの飛龍を置いてきた森を出て更に進んだ頃。

 ようやく国外酔街が見えてくる。

 

「……何も変わっていないな」

 

 ぼそりと隣を歩くアーレスが呟く。


「そりゃそうだろ」

 

 僕はそんなアーレスに向けてそう告げた。

 ここが変わっているはずがないじゃないか。

 見えてきた国外酔街。

 古びて貧素な、いやもうないと言っていいクソみたいな柵に囲まれた小さな村。 

 その小さな村にある家屋のほとんどがオンボロ。屋根も壁もないような家ばかりである一方、一部の家屋は頑丈に作られている。

 そして、屋根も壁もないようなクソみたいなどの家でも壁と屋根に覆われた小さな空間だけは必ず確保してある。

 

「うへ……」

 

 僕は眉を潜める。

 国外酔街に近づけば近づくほど腐敗臭が鼻につく。

 臭い……。

 僕はなんとか我慢する。


「あぁ。無理だわ」

 

 すぐさま僕はそう判断し、吸血鬼としての力を開放する。

 マジで臭すぎる。

 吸血鬼に変貌すれば腐った死体の匂いでも高級ワインのような極上の香りに大変貌だ。


「大丈夫ですか?」


「ん。大丈夫」

 

 僕は心配そうに見上げてくるパルちゃんに対して笑顔で返す。


「……」

 

 吸血鬼となった僕をアーレスは警戒心高めで睨みつけてくる。

 ……何もしないよ。

 そして、僕たちは国外酔街に辿り着く。


「あ!レーナさん!」

 

 パルちゃんが無いような柵の残骸にもたれ掛かり、麻薬を吸っていた女性の方に笑顔で近寄っていく。


「おっと……。お?パルシアじゃないか……後ろの二人はパルシアのお客さんかな?」


 パルちゃんを受け止めた女性が僕の方にちらりと視線を向けてくる。


「違うよ。僕はただのパルちゃんの同級生だよ」

 

 大事な所だけを隠しただけのあまりにもボロボロすぎる布だけを身にまとっている女性に僕は言葉を返した。

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