第17話

「ふわぁ」

 

 僕は天空の下、大きなあくびを一つ。


「……呑気だなぁ。お前は……」

 

 それを見て僕の前にいるアーレスが呆れたように僕に向かって告げる。

 今、僕とアーレスとパルちゃんは国外酔街に向かって空を飛んでいた。

 終焉騎士が持っている飛龍に乗って。

 飛龍は魔物の一種であるものの、基本的には人間の味方で誇り高い生物だ。見た目はドラゴンと呼ばれる最強と名高い魔物を少し、いやかなり小さくした感じだ。

 やっぱドラゴンは最強だよね。この世界には残念なことにドラゴンが一人しかいないんだけど。

 僕も一回見に行ったことあるけどめちゃくちゃ大きかった。多分倒すのには苦労すると思う。


「すぅすぅ」

 

「僕より呑気な人いるよ?」

 

 僕は僕の膝の上で寝息をたてているパルちゃんの頭を撫でる。

 パルちゃんはぐっすりだ。


「……パルシアは別に決まってんだろ。お前は吸血鬼だろうが。……というかなんで飛龍はお前を乗せているんだ」

 

 飛龍は基本的にアンデッド憎しだ。

 飛龍の性質上アンデッドを背中に乗せるようなことは普通しないだろう。


「まぁ今の僕は良い感じに人に擬態しているからね」


「……力と引き換えにな。俺に殺されたらどうするんだ」


「いや、別に心臓一個潰されても死なないし。どれだけ僕が命を吸っていると思うの?」

 

 僕はアーレスの言葉に当たり前の用に答える。

 それを聞いてアーレスは思いっきり顔をしかめる。


「……ちっ」

 

 そして、僕に対してアーレスは舌打ちを一つ。


「人の命を何だと思ってやがんだ……」

 

 僕を今すぐに殺さんと言わんばかりの殺気が込められた言葉を僕に向かって投げかけてくる。ひどい。


「君たちは豚さんの命を何だと思っているの?」


 僕はそんなに言葉に対してそう返す。

 これは僕がいつも人間の命を何だと思っていると聞かれた時に返す言葉だ。

 ちなみにだけどこの世界には動物は豚しかいない。鳥も、牛も、犬も、猫も、虫も、魚のも居ない。この世界には人間と、アンデッドと、魔物と、豚しかいない。

 なんて極端な世界だ。

 この世界の人間はいつも植物と豚を食べている。魔物はアンデッドを食べている。アンデッドは人間を食べている。生き物全てを殺そうとし、アンデッドを主食としている魔物は人間とアンデッドから忌み嫌われ、殺されている。

 そんな世界だ。ここは。


「ちっ」

 

 アーレスは僕に対して舌打ちを向け、それっきり黙り込んでしまった。


「ふわぁ」

 

 僕は再び一つあくびを浮かべ、眠りこけているパルちゃんの頭を撫でた。

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