第16話

「違うんだ……違うんだ……」


 アーレスは手をテーブルの上に置き、違う違うと呟き続ける。


「なるほどね……」

 

 僕は頷く。

 アーレスの言い訳を聞いた僕はなるほど、と頷く。


「アーレスは国外酔街出身だと……里帰りのつもりで国外酔街に行ってそこで会ったと……なるほど」

 

 僕は頷く。


「あぁ。そうだ」

 

 アーレスも頷く。


「それで君はパルちゃんのお母さんを買った、と。終焉騎士として稼いできたたくさんのお金で国外酔街を救うでも、状況を変えるでもなく、女を買った、と?一体何をしたというのか」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ。違うんだ……俺は……あの人が……」

 

 アーレスが僕の言葉に自分の頭を突っ伏す。

 

「……行きましょう!」

 

 パルちゃんが立ち上がり、告げる。


「終焉騎士団のお兄ちゃんもいるのです!久しぶりに帰りたいです!まだお母さんは生きているのです!」 

 

「……っ」

 

 パルちゃんの言葉に一瞬アーレスが寂しそうな表情を見せる。

 そしてすぐさまそんな表情を打ち消す。


「あぁ。そうだね。行こうか」

 

 アーレスはパルちゃんの言葉に頷く。


「みんなも一緒にです!」

 

 パルちゃんが僕らの方に視線を送る。


「いや、行くなら僕だけだ」

 

 そんなパルちゃんに対して僕ははっきりと告げる。


「えぇ!?なんでよ!?」

 

 それに対してニーナが不安げに声を上げる。


「君たちが見るような、行くようなところじゃない。この世界には見なくていいものがある」

 

 無能な働き者は銃殺するしか無い。しかし、そんな存在よりも下手な力を持った理想主義者、妄想厨のほうがよっぽど厄介だ。


「私は……」

 

「ひどいよ。あんな内戦はぬるま湯でしかない」

 

 僕は罅隙の言葉を遮って告げる。

 虐殺も、拷問も、集団強姦もなかった和の国の内戦は平和そのものだ。


「……っ」

 

 そんな僕の言葉に罅隙は言葉を詰まらせる。

 内戦がぬるま湯。

 その僕の言葉にニーナとガンクスも面食らっている。


「行くのは僕とアーレスとパルちゃんだけ。これで良いよね?パルちゃん」


「はいです!」 

 

 パルちゃんは元気よく僕の言葉に頷いた。


「確かにそっちのほうが良いかもです!ここじゃありえない光景ですから」

 

「それじゃあいつ行く?」


「いつ死んでもおかしくないですから、出来るだけ早くが良いです!」

 

「そうだね」

 

 僕はパルちゃんの言葉に頷く。


「終焉騎士様はいつ空いている?」


「……気にする必要はない。しばらくはここにいる。明日にでも行けるさ」


「じゃあ明日行こうか」


「はいです!」


「あぁ」

 

 僕の言葉にアーレスとパルちゃんの二人が頷いた。

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