第9話

「……」


 僕は見たこともないタコ足の化け物を前に若干尻込みする。

 ……何もわからない相手。何をしてくるかわからない相手。どう攻めるべきか悩み、無言で相手を睨みつける。

 

「……まぁとりあえずやってみるか。束縛血界」

 

 僕はとりあえずタコ足の化け物を血の結界で包み、封印する。

 ……。

 …………。

 沈黙が続く。

 ……。

 …………。


「終わり!?」

 

 僕は驚愕の声を上げる。何の抵抗もなく封印されたタコ足の化け物に。

 封印されるときも何もせず、封印されてからも何もしなかった。

 タコ足の化け物は完全に僕の束縛血界に取り込まれ、封印された。

 束縛血界が僕の方へと戻ってきて、そのまま僕の中へと沈んでいく。あれが僕の中にあると思うとキモいな。心の底からそう思う。


「……何だったの?」

 

 僕はアーレスの方を向き、尋ねる。


「いや、わからん」


「は?」

 

 アーレスの疑問に僕は反射的にそう答えてしまう。


「いや、そんなに睨むな。別にお前が吸血鬼だからと言って情報を出し渋っているわけじゃない。俺らも知っていることは少ないんだ」


「……僕はすでに巻き込まれた。悪いけど全部話してもらうよ」

 

 ……いつもなら面倒そうだから、ノータッチなのだけど今回は触れさせてもらう。

 僕はこんな化け物知らない。

 ゲームには出てこなかったはずだ。……和の国編の後にあったのは終焉騎士編、闇の聖女のお話だ。

 確か……よくわからない謎の組織が闇の聖女の育ての親を誘拐し、化け物へと変えられた事件から始まったシナリオだ。今思えばこのよくわからない謎の組織が悪魔崇拝者だったのだろう。

 このシナリオは終焉騎士とともに謎の組織との戦うっていうものだった。

 基本的な敵は人間。最後に触手の化け物は出てくるのだが……こんなタコじゃなかった。明らかにゲームとは流れが変わっている。敵が悪魔崇拝者であることには代わりはないだろうが……。

 何かが起きている……流石にそれを見過ごすわけにはいかない。


「あぁ。わかっている。……流石にこの期に及んでお前の協力を跳ね除けたりはしない。……それくらいはわけまえている」


「それなら良かった。一体いつ面会出来るんだい?」


「今からでも可能だ」


「え?今から?」

 

 僕はアーレスの言葉に驚く。


「あぁ。そうだ。元から何かあったらすぐに集まれるようにしていたのだ」


「へぇー。そうなんだ。じゃあ案内して?」


「あぁ。わかった。……少し待て。連絡してくる」


「うん。待っている」

 

 僕は魔道具を手に、少し僕から離れたアーレスをぼーっと眺めた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

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