第47話
深夜。
昏い闇の中。
二つの人影が走る。
思い立ったが吉。
リリネはすぐに行動を開始した。意思がブレないように。決意がブレないように。
自分の母、弟、妹。血を分けた家族を守るため、自分の父をその手にかける。
そうするべくリリネは今、リリネの父手宮愛鷹がいる皇都京都の中心部に存在している宮廷に潜入していた。僕もリリネについて行っていた。
「……」
無表情で、わずかに震えた手で走るリリネを僕は眺めながら僕も少し後ろを走る。
「……!?危ない」
そんな中、とある大広間に出た瞬間に感じた敵意に反応し、リリネを突き飛ばし僕もその場を離れる。
ついさっきまで僕とリリネがいた場所が黒く焦げている。
「な、なんでござるか!?」
「静かに」
動揺し、声を上げるリリネに告げる。
……誰だ?
僕は内心で首を傾げる。さっきのは吸血鬼の技だ。血を光線へと変えて放つ技。『ブラッドレイ』だ。なぜ吸血鬼がここにいる?
ゲームでは和の国のストーリーにアンデッドは関わらないはずだ。なのに、なぜだ?なぜ吸血鬼がここにいる?なぜ吸血鬼が関わっている?僕がここにいるせいか……?それともゲームのシナリオとは少し変わっているのか。あるいはゲームでも裏では吸血鬼が暗躍していたのか。
いや、そんなことを考えている暇も、その必要もないか。
「リリネ。ここは任せて」
宮廷で感じる吸血鬼の気配はここにいるこいつだけだ。こいつの気配を感じて慌てて京都すべての気配を感知し、探ったから間違いない。
「君は先に行くといいよ。ここにいるよくわからないやつは僕が倒してあげる」
僕は物陰に隠れているリリネにそう告げ、大広間
「わ、わかったでござる」
リリネは僕の言葉に頷き、大広間より奥。この少し先にある、手宮愛鷹がいると思われる場所に向かって走っていく。
「君の相手は僕」
僕はリリネに向けられたブラッドレインを雷魔法で撃ち落とす。
ブラッドレイは貫通力こそ高いものの、耐久性はゼロに近い、簡単な魔法一発で撃ち落とされる。本来ブラッドレイは初見殺し、馬鹿みたいな数を放って使う技だ。
一発じゃどうすることも出来ない。
「ふぅー」
僕は血の息を吐く。
この大広間を僕の色で染め上げていく。
封印を解く必要はない。封印するタイミングがなくて、封印を施していなかったし。アンデッドがいないここ和の国でアンデッドの気配を感知できるような人はどうせいないし。
「そろそろ出てきたら?この場にいるのは僕と君だけだよ」
「えぇ。そうですね」
大広間の影より一柱の支配者が。
闇の王が来訪する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます