第45話

「んー美味しかったでござる!」


「うん。そうだね」

 

 僕はリリネの言葉に頷く。

 確かに美味しかった。特に茶碗蒸し。このお店にも茶碗蒸しがあってよかった。

 今僕たちがいるお店はお寿司屋さんだ。回らないお寿司屋さんだ。回るお寿司屋さんなんてこの世界には無いけど。


「じゃあお会計だね」


「ここは私に任せるでござるよ!」

 

 リリネが颯爽と手を上げ、着物の懐へと手をのばす。僕は着物を着ていないけど、リリネは和の国の人間らしく着物を着ているのだ。


「……あ、あれ?」

 

 リリネの困惑したような声。あ、語尾にござるがついていない。

 

「……???」

 

 リリネがごそごそと着物を漁る。

 その瞳は涙すら浮かんでいた……。

 ……リリネってばドジすぎん?こんなドジだったけ?頑張ったら空回りするタイプなのかな?


「いや、ここは僕が払うよ。色々とお世話になったからね」


 僕はテンパりまくっているリリネに僕は声をかける。

 というか、ガイドしてもらって助けられているのは僕なのだから、ここは僕が払うのが道里だろう。


「……え?」

 

 僕収納魔法から財布を取り出す。

 

「収納魔法……」

 

 ぼそっとリリネが呟く。まぁ、収納魔法って結構難易度高くて、使える人少ないからね。それにほとんどの人の容量は少なくて、あまり入らないし。驚くのも当然と言える。リリネたち勇者、聖女のみんなには異空間収納を見せていないからね。

 バックを使った収納魔法であっても、あれだけの容量があるパルちゃんは化け物。収納魔法だけで言えば世界一だろう。人間、アンデッド含めて。


「……ありがとうでござる」

 

「ん?何が?」

 

 僕はリリネの言葉に首を傾げる。

 

「僕はガイドをしてくれたリリネに感謝を伝えるだけだよ。感謝を言いたいのは僕の方だよ。だからお財布は出さなくていいよ」


「……かたじけないでござる」

 

 リリネは僕に向かって深々と頭を下げる。


「だから良いって」

 

 僕は苦笑を浮かべながら会計を済ませる。

 名家のご令嬢であるリリネの行きつけのお店なだけはあって、値段はかなり高かったが義賊活動によってぶくぶくと太った僕のお財布には痛くも痒くもない。

 大名はさっさと力を失って、中央集権化を進めてどうぞ。


「ごちそうさまでした」


「また来るでござるよ」

 

 僕とリリネはお店から出る。


「さて、この後は何処に行くの?」


「任せるでござるよ!ご飯まで奢ってもらってござるからな!和の国を存分に満足させるでござるよ!とっておきの場所にも案内するでござるよ!」

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