第43話

「これが我が国が誇るお寺でござるよ!」

 

 リリネが自信満々と言った表情で告げる。

 僕とリリネは皇都京都の観光をしていた。京都の北のほうはパルちゃんたちと回ったから、今いるのは南の方だ。

 北の方と南の方。別に京都はすごく広いわけではないけど、北の方と南の方では結構ガラリと景観が変わっていて面白い。

 

「私は一応名家の娘でござるからな。普段は入れないような場所でもさっさと入れるでござるよ!」

 

 リリネはそんなことを自信満々に話してお寺の中に入ろうとして、そして───


「すみません。ここから先は立入禁止区域です」


「ふぇぇ!?」 

 

 普通に止められた。

 お寺の門に立っている門番の二人に。


「な、なんででござるか!?普段なら入れているでござる!」


「いえ、入れません。いくらご令嬢でも入ることを許可出来ません」


「えぇぇぇ!おかしいでござるよ!」


「何もおかしいことなどございません。お引取りを」


 門番の二人はリリネに向けて槍を向け、立ち去るように促した。


「うぅぅ」

 

 リリネは顔をうつむかせ、僕の方に戻ってくる。


「うぅぅ。恥ずかしいでござる!」

 

 赤く染まった顔を両手でかくし、叫ぶ。恥ずかしそうだ。

 ……それにしても、なんであそこが立ち入り禁止になっているんだ?リリネの様子を見るに普段は入れたようだが……何かあるのか?


 僕の瞳が一瞬赤く染まる。

 

 吸血鬼特有の真っ赤な瞳に。元々の綺麗な黄色と青のオッドアイから。

 大地に僕の血が染み込み、お寺一帯を包み込む。僕の血は一滴でも膨大な力を持つ。攻撃から索敵まで何でも出来る。血は吸血鬼の力の源。『人間』を読むことくらい造作もない。

 僕はお寺の中に数人の『人間』を発見する。

 リリネと似た匂いの血を持った、ね。

 なるほどね。僕は血を回収する。知りたいことはすべて知れた。


「いつまでうつむいているの?」

 

 僕は意識をお寺からリリネへと戻す。

 頬を赤らめ、うつむき続けているリリネへ告げる。


「うぅぅ。恥ずかしいでござるぅぅぅ」


「もう良いから。お寺は。それとも和の国にはここしかいい場所がないの?」


「そんなことないでござるよ!」

 

 リリネは予想以上に強い言葉で僕の言葉を否定する。

 やっぱりリリネの愛国心は結構高いな。うん。

 

「じゃあ他の場所にも案内して?」


「もちろんでござる!」

 

 リリネは勢いよく頷き、歩き始める。

 そして───────

 

「あっだ!?」

 

 何もないところでつまづき、ド派手に転んだ。

 ……もしかして、リリネってば結構ドジなのか?


「大丈夫?」

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