第41話
「どうなされたのですかな?水の聖女リリネさん?」
「な、な、なぜわかったのでござるか!?」
「その特徴的な喋り方を少しは隠してから言ってほしいものですね」
「あ……」
うっかりと、言ったような声をリリネは上げる。
「それで?私に一体何のようですか?かの有名な水の聖女リリネさんが」
「止めに来たでござる」
「はて?何をでしょうか?」
僕はわざとらしく首をかしげて見せる。
「お前の義賊としての活動を、でござるよ。民に富を分配する、それは一見いいことに見えるかもしれないでござる。しかし、富を奪われたことによって当主が潰れ、領地を運営するものがいなくなったことによって一番困るのは民たちでござる。民のためにぜひ止めてほしいでござる」
リリネは僕に深々と頭を下げる。
「くくく」
それに対して僕は意味深な笑みを浮かべる。
「な、なんでござるか?」
「民のため、ですか?一体いつから私が民の味方だと思っていたのですか?私は私の味方です。民などどうでもいい。私が民に金を分配していているのは僕を義賊と崇めさせることで、追手の手を緩ませるためだ。領民の協力を得られない状態の侍たちが私を見つけることなど不可能なことですからね」
領民からの目撃情報。それを元に侍たちは調査を行う。しかし、義賊としてもてはやされる僕の情報を売り渡す人間はそういない。
僕の調査は難航するというわけだ。
「私が分配している富などごく一部に過ぎないですからね」
「なっ!?貴様ッ!」
水の聖女リリネが僕を睨むつける。
「おぉ。怖い怖い。そんなに私を情熱的に睨みつけてどうしたのですか?」
「くっ……貴様はここで斬るでござる!」
「くくく、なぜ怒っているのか。あなたも民などどうでもいい口でしょう?」
「そんなことないでござるッ!」
「素晴らしい冗談だ。水の聖女様にはジョークのセンスもあるようですね。民を思っているのであればなぜ早く内戦を止めないのですか?あなたなら出来るでしょう?手宮家の次期当主にして、水の聖女様?」
「そっ……それは……」
リリネは僕の言葉に何も言い返せない。僕に向けられていた敵意が急速に衰え、リリネはうつむく。
さっきまでの勢いは全くと言っていいほどなかった。
沈黙。
僕達の間に沈黙が流れる。
「義賊の行いをやめる、でしたか?」
「……そうでござる」
「いいでしょう」
「え?」
「その代わり条件がある」
「じょ、条件?」
「うん。君の父のせいでせっかくの修学旅行が潰れちゃったからね。案内してよ。和の国を」
僕は仮面を外し、告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます