第38話
すでに多くの血が流れた平野。
そこでさらなる血が流れようとしていた。
手宮愛鷹の軍勢は、御大護天皇の本陣が荒れているのをすぐに察知した。
そこからの動きは迅速そのもの。
直ちに兵をまとめ上げ、本陣への突撃を敢行した。
手宮愛鷹の軍勢の総大将を務めるのは手宮家とかなり長い付き合いのある侍の名家、徳山。徳山家当主である徳山一教が指揮を取っていた。
それに対して、御大護天皇の軍勢の総大将を務めるのは御大護天皇その人だった。
総大将自ら率いている軍なのだ。当然も士気は高い。
つい先程までは。
何者かによって味方が虐殺され、御大護天皇の配下の中が知れ渡っていた男があっさりと殺されたのだ。
士気も下がるというもの。
しかし、その下がっていた士気は手宮家の軍勢を見て、戻り始める。
主君である御大護天皇を守る。そういう意識が湧き上がってくる。
にらみ合う両軍。
被害を受けた本軍と急ごしらえで慌てて集めた軍勢。
戦力はほぼ同じ。
士気だって変わらない。
泥沼。
今、泥沼の戦いが始まる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」
「かかれぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!」
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!」
ぶつかり合う。
両軍が。
激しく。
互いの刀と刀が交り合う。
刀がぶつかり音と、雄叫びに悲鳴。
多くの血が流れる。
人がただの肉塊へと、ゴミクズへと成り下がる。
一瞬で。
「『ファイヤーボール』」
「『ウォーターカッター』」
和の国の戦力のほとんどが侍。近距離戦闘を得意とするものだ。
しかし、だからといって魔法使いがいないわけではない。
魔法が前線に襲いかかる。
侍たちはさも当然のように魔法を斬り裂く。魔法を斬り裂く。大陸では出来るものが少ない、高等技術。
それを侍たちは至極当然のように行っていた。
侍。
侍の近接戦闘のレベルの高さがよくわかる。
魔法を斬り裂く。
その一瞬。
魔法を斬り裂くために刀を振り下ろす一瞬。
その瞬間は酷く無防備だった。魔法を斬り裂いた侍は目の前の侍に首を斬られ、落ちる。
魔法は前線への支援のため、火を吹き続けていた。
そして、戦いは徐々に強者のものへと移り変わっていく。
台風のように暴れまわっていた二人の侍の視線が交わり、風向きが変わる。
戦場は静寂に包まれる。
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