第28話

 転移後。

 僕の前にあるのは一つの小さな小屋。

 ここが今の僕の拠点だ。


「ご苦労」

 

 一言ねぎらいの言葉をかけ、小屋に入る。


 別に僕が魔法を使ってこの場所に転移することも出来るけど、そんなことをした場合絶妙なバランスの上で成り立っている霧の能力が霧散してしまうため出来ない。

 沼地全体に自身の能力を行き渡らすのは大変なことなのだ。


 小屋に置かれているのはたくさんの紙が乱雑に置かれたテーブルと二脚の椅子。壁にも地図やたくさんのメモ帳が貼り付けられ、床には僕が今までたくさん盗んできた金銀財宝が置かれている。

 

「ふぅー」

 

 僕は椅子に座り、テーブルに乱雑に置かれた紙の束を眺め、要らなくなったものは再現した炎魔法を使って燃やす。塵も残さぬように。

 

「……やりたいことが多すぎるな……面倒だし、すべてやめようかなぁー」

 

 僕はため息をつく。

 和の国はアンデッドの脅威がない唯一の場所だ。

 この世界で唯一の安全地帯なのだ。だから、ここに対アンデッド国際機構の本部を移したかったのだが……ちょっと色々やりたいことが多くて、心が折れてしまいそうだ。

 対アンデッド国際機構とは、国際平和と平和の維持を行い、人類が協力してアンデッドと戦えるようにするための機構だ。

 国家間でのトラブルの際、人間同士で争うことのないように仲介に入ったり、国が違う軍隊でも協力して戦えるように、総司令部として指揮を取ったり。

 国際連合(笑)とは違い、ちゃんと仕事をしている。第二次世界大戦の勃発を防げなかった国際連盟の様々な反省を踏まえ、新しく作られたのに、結局幾つもの戦争、紛争、内乱を防げないクソ雑魚お飾り組織は違う。

 

「まぁまぁお茶で飲んでも落ち着いてくださいな」

 

 身長3mくらいありそうな顔も髪もなく、ただ指がない手だけが生えた緑色の棒みたいなやつが、僕の方に近づいてきてお茶を出してくれる。


「あぁ、ありがとう」

 

 このよくわからん生物は、沼の王である。正確に言うと沼の王の体から生えている突起物だ。

 沼の王は突起物を切り離し、その突起物に自分の意識を移す事ができるのだ。これもスキルによるものだ。スキルって便利だね。なんでもありだ。


「まぁまぁ私も長く生きていますから。困ったことがあったらいつでも相談してくんしゃいな」

 

 ……こいつ、突起物のときとデカブツのときの性格明らかに違うよな。ちゃんと意識移せているのか?


「長く生きている分たくさんのコネも持っていますからねぇ。和の国一の商人とのコネなんかもあったりしますから」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 僕は立ち上がる。

 一番の難題が解決したぞ!?

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