第27話
沼地。
和の国は僕の前世の日本と同じ面積をしている。
そんな和の国。前世の日本じゃ首都となっている東京、そしてその一帯の関東圏。
そこは、沼地。和の国には関東圏一帯に広がる巨大な沼地が存在していた。
関東圏一帯に広がる沼地は一度入ったら行きては帰れぬ、人間を喰らう沼地として恐れられていた。
「ふー。相変わらずここは湿っぽいな」
僕は沼地を歩く。
沼地には深い霧が立ち込めている。
この霧が人の方向感覚を狂わし、迷い込んだものを掴んで離さない地獄を作り出している。
ザバァァァァァ
沼地の水を切り、一つの怪物が僕の前に姿を表す。以前僕が戦い、倒した巨大なカブトムシの幼虫のような姿をした虫型の魔物と同じような感じの雰囲気の見た目の魔物。まぁこれの見た目の禍々しさはこいつが遥かに上回るが。
イボイボで緑色の体に体から伸びる謎の突起。
顔はどす黒い赤色で、顔からホースのようなものが伸び、沼地の奥底へと伸びている。キモイでござる。
「来るのが遅い」
「す、すみません……ノーネーム様」
ペコリと魔物が頭を下げる。
そんなこいつは沼の王。この沼地で唯一の魔物であり、ここの偉大なる王だ。
この沼地に迷い込んだ人間は例外なくすべてこいつの腹の中に収まる。
僕よりも、というかほとんどのヴァンパイアよりも長生きをしている魔物だ。エルダーヴァンパイアレベルに長い時を生きている。
だからこそ知能の低い魔物という存在にも関わらず、人間の言語を理解し発する事ができるレベルの知能を有している。
普通の魔物は、知能が低く、なんか知らないけど保有している魂の力が少ない。味噌っかすだ。
魔物といいつつ、動物。といったほうが個人的にはしっくり来る。この世界は前世とは違い人間以外の動物は存在していない。人間とアンデッドと魔物しかいないのだ。
魔物には化け物ようなやつが多いが、犬みたいなやつも少ないながらには存在しているから。
内乱が起こり、罅隙をルトたちの元に届けた後、僕はこいつのもとに直行し、こいつをボッコボッコにして僕の配下にしてやったのだ。
いくら長い時を生きる魔物だからといっても、下手なエルダーヴァンパイアよりは遥かに強い僕に敵うような相手じゃない。
「まぁいいよ。じゃあ早く移動させて」
「了解しました……」
沼の王は体を揺らす。
霧が更に深くなり、沼が巡る。
この沼地は沼の王の縄張り。沼地の間であれば自由自在に転移することが出来る。この霧を生み出しているのも沼の王。
沼の王はそういうユニークスキルを保有しているのだ。
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