第24話
「何者!?」
いきなり部屋に入ってきた少女に俺らは戦闘態勢を取る。
「失礼しました」
そんな俺たちを前に目の前の少女は和の国流の礼を見せる。
「……あなたはッ!」
リリネが目の前の少女を見て、驚愕の表情を浮かべる。
「私は罅隙。御大護天皇の一人娘です」
「なっ!?」
「御大護天皇の」
「一人娘ぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!?」
俺たちは予想を遥かに超える目の前の少女の正体に驚愕の表情を見せた。
リリネの驚きを見るに、きっと本物なのだろう。
「こんな内乱の犠牲者は一人でも少ない方が良いですよね。私に腹案があります。良ければ聞いてくださりはしませんか?」
■■■■■
俺たちは聞き終える。
彼女の、御大護天皇の一人娘である罅隙さんの計画。それはとても壮大なものだった。
だが、その計画には。
確かな希望があった。
「……無理でござるよ」
罅隙さんの腹案。それを聞いたリリネが震えながら一言を告げる。
「そんなの!無理でござるよ!」
「えぇ。たしかにそうですね。ですが、やらなくてはなりません。この国のためにも。梨里音さん。手宮愛鷹様のご息女であるあなたの協力も得られると心強いです。どうか、協力してはもらえませんか?」
罅隙さんはリリネに手を差し伸べる。
「……」
リリネは罅隙さんの手を呆然と眺める。
「嫌で、嫌でござる……そんな、の……夢物語でござるよ……」
「はい。そうですね。ですが、勝算はあります。この国にも内乱を望んでいない人たちが存在していますから。彼らを味方に引き込むことさえ出来れば……」
「無理でござる」
「……協力した方がいいわ。その方が被害が少なくて済む」
マリアがそうはっきりと告げる。リリネの言葉を否定するように。
「……な……なっ」
リリネはマリアに信じられないものを見るような視線を向ける。
「な、んででござるか……?協力してくれると言ったでござらんか!」
リリネは叫ぶ。
そして、理解する。
もう自分の味方がいない、ということに。
今、俺も他の聖女たちも。罅隙さんの作戦に賭けた方が良いと思っていた。これならば犠牲になる人の数も抑えられる。
「……すっ!」
沈黙の後。
リリネは扉を蹴り開け、この部屋から逃げるように出ていってしまった。
「待って!」
すぐさまシーネが立ち上がる。
「待ちなさい」
飛び出して行ったリリネを追おうとしたシーネの手をマリアが掴む。
「追ってどうするつもり?」
「連れ戻す」
「どうやって?もしかして彼女に協力して、このまま御大護天皇側を敗北させるまで戦うつもり?」
「だが!」
「彼女には冷静になる時間が必要だわ」
シーネとマリアが互いににらみ合う。
そんな様子を俺は呆然と眺めている。
……俺は。どうすることも出来なかった。
どこまでも……弱い。俺は……。
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