第21話

 和の国。

 ゲームでの和の国のモチーフは南北朝時代の日本だ。

 

 今回の内乱。今行われる戦いの理由。

 ことの発端は、御大護天皇が自ら政治の実権を握っていた『建刀の新政』が、たった3年で崩壊してしまったことだ。

 武士の地位が下がっていくことを危惧した水の聖女の父、手宮愛鷹が反乱を起こした。

 御大護天皇は京都にいたのだが、内乱に素早く気づいた部下の手回しで京都から脱出。そして、奈良の吉野に逃げようとしている。

 だが、そんなこと手宮愛鷹が許すわけがない。すぐさま手宮愛鷹の命令によって御大護天皇を討伐するように命令が下される。

 そして、そんな御大護天皇を守るべく立ちふさがる侍たち。それが今行われている戦いだ。

 手宮愛鷹がここで御大護天皇をしっかりと殺せれば手宮愛鷹の勝利で終わるだろう。

 しかし、そうも上手くは行かなそうである。

 今のところ手宮愛鷹の部下はやや優勢と言った感じではあるが、勝ちきれていない。

 手宮愛鷹の部下が足止めされている間も、御大護天皇はえっちらほっちら逃げている。

 まぁこれはゲーム同様御大護天皇に逃げられるかな。


 この後の流れもゲームと一緒だろう。

 ゲームだと吉野まで逃げた御大御天皇は、そこ吉野を皇都として定め、『南朝』を開く。それに対抗するように手宮愛鷹も京都を皇都とし、孔明天皇を御大護天皇の代わりとして即位させ『北朝』を開く。

 京都の「北朝」と吉野の「南朝」が並立することになり、それぞれが正当性を主張して衝突。全国の武士たちも「北朝」と「南朝」のいずれかについて、激しい戦いが巻き起こされる。

 ……そんな最悪のシナリオ。内乱の中、ルトたちがどう動くかというのがメインストーリーとして用意されている。

 特に内乱に干渉せず、内乱状態のまま水の聖女を和の国に残して大陸に帰るというストーリーだって用意されている。

 

 まぁ大体のプレイヤーは【水の聖女とともに『南朝』を潰す】か、


「やぁ。大丈夫かな?」

 

 僕は馬から落馬し、土に汚れた着物の少女に手を差し伸べる。


「あ、はい」

 

 着物の少女は僕の手を掴み、立ち上がる。


「なん!?何処から来た!?」

 

 着物の少女を囲んでいた侍たちが僕を見て驚愕の表情を浮かべる。


「そんなの教えるわけ無いし、知っても何の意味もないよ」 

 

 彼らの首はぽとりと落ち、彼らはゆっくりとその体を倒す。


「ご無事で?」


「は、はい」

 

 着物の少女、【御大護天皇の娘に協力する】か。

 その二択を選んでメインストーリーを進めることになるだろう。

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