第19話
「え?何?何?」
ニーナとガンクスが大きな物音に反応して目覚める。
物音。
たくさんの人の足音と人々、先生や他のクラスメート、和の国に来ている一学年の生徒の叫び声、悲鳴など聞こえてくる。
「アウゼスくん……」
ずっと前から起きていたパルちゃんが僕の服をぎゅっと掴む。
「大丈夫だよ」
僕はそんなパルちゃんを安心させるように頭を撫でる。
最近僕パルちゃんの頭撫ですぎじゃね?
バンッ
そして扉が開かれ、甲冑を纏とい、完全武装の侍たちが中に入ってくる。その手は腰の刀に添えられている。
「やぁやぁ」
僕はそんな男たちに近づいていく。
「動くなッ!」
侍たちは僕に向かって叫ぶ。
だが、僕はそれを無視する。
「いきなり女の子も寝ている部屋に土足で入り込んでくるなんて失礼じゃないかい?ここの文化だろう?土足で部屋に入らないというのは。主君を裏切り、誇りまでも失ったのかい?」
「なっ!?」
僕の言葉に目の前の侍たちは驚愕に身を固める。
「それで?僕たちが帰るための飛行船はどれだい?早く案内してほしいな。どうせ僕らを殺すことは出来ないだろう?」
「あ、あぁ」
目の前の侍は僕の言葉に頷く。
「ちゃんと護衛をしてよね?君たちに僕らは殺せない。殺すわけには行かない。内乱状態のこの国が僕らの国と戦う力など有していないだろう?ほら。三人行くよ」
僕は三人と一緒に歩き始める。
「え、あ、うん」
「ちょ、ちょ、ちょ!?どういうこと!?だ、大丈夫なの?」
「うん。大丈夫。彼らに僕らは危害を加えることは出来ないしね。ただ僕らはこのまま飛行船で本国に送り返されるだけだよ。それだけをわかっていればいいよ」
「な、なるほど……」
何が起こっているのかわからない人たち。
刀を突きつけられ強制的に動かされている人たちの中で僕たちはさも当然のように悠々と護衛を引き連れ歩く。
「あ、団子買っていこうか」
そこに緊張感なんてものは少し足りともなかった。
■■■■■
「あれ……?アウゼスくん……?」
■■■■■
「ふわぁ」
僕は飛行船を眺める。
続々と生徒たちが乗せられている飛行船を。
よくもまぁ飛行船を用意したものだよ。
僕は飛行船に乗っていない。
何かあったときのために僕はここに残るのだ。
……少し過保護すぎるかもしれないけど。
まぁ放置してルトが死んでしまう、なんてことになったら大変だし。
普通に水の聖女が死んでしまうルートもあるし。
それに、ゲームではパルちゃんがやる予定だった役割もあるし。それは僕が代わりにここに残り、こなさなくていけない。
「……僕は夜の王。不死者の統率。吸血鬼」
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