第17話
「何やっているの?」
僕は竹刀を持って息を切らしているニーナとガンクスに話しかける。
「いや、今天丸里心流という防御特化の流派と対峙しているのだが、その防御が抜けなくてだな」
「あぁ。天丸里心流ね」
僕はその名に聞き覚えがあった。
マイナーな防御特化の剣術の中では最強という名を持っていたはずだ。素人が始める剣術おすすめ第一位だったけ?
僕は僕が以前喰らった侍の記憶を思い出す。
「その剣術すごく簡単な破り方があるんだよ」
「ほう?」
僕の言葉にニーナやガンクスではなく竹刀を持ち、佇んでいた男が反応する。
「簡単な破り方、と?」
「うん。そう。見せてあげるよ」
僕はニーナが持っている竹刀を受け取る。
流石に和の国の動乱に三人が巻き込まれることはないだろうけど、念の為見せておいたほうが良いだろう。まぁ巻き込ませないけどね。僕が。
「よし。行くよ?」
「良いだろう」
「よっ」
僕は『縮地』と呼ばれる意味わからない技術を使い男との距離を詰め、刀を振るう。
一合、二合、三合
幾度も刀と刀がぶつかり合う。
僕は男がしっかりと僕の動きに対応できるように刀を振るう速度を上げていく。
天丸里心流の防御スタイルは非常に簡単でただ敵の攻撃に刀を合わせるだけ。幾度も剣を交え得た経験を元に、考えるよりも早く、条件反射で相手の刀に合わせて刀を振るい合わせるのだ。
結局の所。シンプルなのが一番強いのだ。
条件反射で確実に合わせてくるので普通にウザい。考えなくて済むので初心者にも簡単。雑兵対雑兵の戦いでは無類の強さを発揮する。
シンプルで簡単。何も考えずに行う。
「はい。終わり」
それすなわち簡単にフェイントにかけられるということだ。
僕は男の首筋に刀を当てる。
「なっ!」
男は驚愕に固まる。
僕がやったことは非常に簡単。
フェイントにかけただけだ。早い斬撃を一瞬だけ速度を緩め、空振りを誘った。そらだけだ。
たったそれだけで崩れてしまう剣術。
それ故に天丸里心流はあんまり強いと言う印象ではなかった。
「天丸里心流は弱者のための剣術だ。そこまで強くない。簡単にフェイントを引っ掛けることが出来るんだよ?今みたいにね」
僕と男の戦いを見ていたニーナとガンクスに話す。
まぁ魔法使いであるニーナと、元々防御主軸のガンクスにこんなピンポイントな教えが必要かどうかは微妙なことだけど。まぁそれでも和の国で戦いに巻き込まれた場合は必要になるはずだ。
「貴様……!我が流派を侮辱するか!弱者のための剣術だと!?」
男が僕を睨みつけてくる。
「ただの事実だ」
「何だ!貴様!それでは天丸里心流を学んできた我らが永遠に弱者のままとでも言うのか!」
「ふん。ほざけ。弱者のための剣術を強者のための剣術に、自分の剣術に変えるのがお前らの仕事だろう。学んで終わりじゃない。学んでようやく始まりなんだよ」
僕は男に一方的に告げる。
「じゃあ、他のところに行こうか」
僕は三人の方に振り返り、告げた。
「カッコいい……」
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