第11話

 それから長く。

 幾つもの山々を、川を越え、長い大海原を越えた先

 僕たちが飛行船に乗ってから早50時間。

 ようやく目的地である和の国。島が見えてくる。

 

「パルちゃん。……パルちゃん!」 

 

 僕の膝の上に頭を乗せて、眠っているパルちゃんを揺さぶる。


「ふにゃ……ふぁん」


「ほらー、起きてー」

 

 未だ寝ぼけているパルちゃんの耳元に口元を近づけ、囁く。


「ふぅん……アウゼスくぅーん」


 パルちゃんが僕の名前を呼ぶ。

 ……よしよし。意識がちゃんと覚醒してきた。

 

「はいはい、アウゼスですよー」


 寝ぼけているパルちゃんは僕の名前を呼び、僕に抱きつき僕のお腹に顔を埋めてくる。


「ふぇぇぇーいい匂い」


「はいはい。パルちゃんもいい匂いだよー」

 

 僕とパルちゃんはじゃれ合う。


「……まだ海の上ですかぁ?」


 パルちゃん。

 もとより空を飛んでいる、という状況に恐怖感を抱いていたパルちゃん。

 それでもなんとか恐怖を押し殺して我慢していたようだけど、それは海の上に来ることによって崩壊した。

 恐怖で半泣きになってしまったのだ。

 そこで、僕がパルちゃんを寝付かせたのだ。寝ていれば恐怖なんて忘れられるからね。

 子守唄を歌ったのなんて初めてだよ。

 

「うん。そうだね」


「……このまま顔を埋めててもいいですかぁ?」


「うん。良いよ」

 

 パルちゃんは僕のお腹に頭をすりすりする。


「……私たちは何を見せられているのかしら?」


「……そうだな」

 

 僕とパルちゃんの様子を見ていたニーナとガンクスが呆れたような声を漏らす。

 ……どうしたのだろうか?


『乗客の皆様。まもなく当便は和の国に着陸いたします。お降りの際はお忘れなもののないようにご注意ください』

 

 風魔法によって声が拡散され、機内にいるすべての人に聞こえてくる。

 

「ほら、パルちゃん着いたよ」


「……お外まで運んでいってください……」


「わかったよ」

 

 飛行船の扉が開き、中に冷たい空気が流れ込んでくる。


「にょっこいしょ」

 

 僕はパルちゃんを抱き上げる。

 他の人であればパルちゃんを運ぶなんて酷く簡単なのだが、パルちゃんと同じくらいの身長しか無い僕には結構大変である。

 歩きにくい……。

 

「はい、降りるよー」

 

 僕はマリア先生の指示に従い、飛行船から降りる。

 

「はい。降りたよ」


「ほんと!?」


「うん」

 

 僕の言葉に聞いてパルちゃんは目を開き、僕の手から降りる。


「……すぅ」

 

 パルちゃんが大きく息を吸う。


「大地だァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 パルちゃんは大きな叫び声を上げた。





 カクヨム文芸部 書評バトル!らしいですよ?

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