第10話
「別に空からの景色とか興味ないし」
「楽しめないですよ!怖いじゃないですか!」
ニーナの言葉に対して僕とパルちゃんが答える。
「信じられないですよ!なんで皆さんは怖くないんですか!?」
特にパルちゃんの熱量は凄まじい。
「人類は大地を歩き!大地の中を生きてきました!私達は空を支配する種族ではないです!!!」
パルちゃんは止まらない。ものすごい熱量で、早口で言葉が流れていく。
僕達はパルちゃんの圧倒的な熱量を持つ演説を聞き流した……。大地の中を生きてきましたって何?僕らは地底人じゃないよ?
■■■■■
「フッハッハッハ!」
ニーナがまるで魔王かのような高笑いを一つ。
「これで私の勝ちよ!チェックメイト」
「……僕キング一人だよ?そんな相手に勝って嬉しいの?」
「嬉しいに決まっているじゃない!!!」
「そう……まぁ、でもチェックメイトでもなんでも無いけどね」
僕は唯一の手駒であるキングを動かす。
ニーナの幻想をうち砕く。
「……あれ?」
「ただのチェックだね。ほら。次だよ。次」
「……え?」
タンッタンッタンッ
盤に駒が置かれる音が響く。
一手、二手、三手
時が経つにつれ形成は塗り替わっていく。僕有利へと。
「はい、これで終わり。チェックメイト」
「あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ???」
ニーナは目の前の盤上を前に首を傾げる。
どれほど眺めようと、結果は変わらない。僕の圧倒的勝利であった。
「これで僕の勝ちだね」
チェスの戦歴。
VSパルちゃん 50戦50勝0敗
VSニーナ 14戦14勝0敗
圧倒的だった。僕はパルちゃんに40勝してからずっとキング一齣で戦っているんだけどね?
手加減するなって言われているから手加減していないのだけど……手加減したほうが良いのだろうか?
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
ニーナはテーブルに顔を突っ伏し、唸る。
一度勝てる!そう思ってしまってからの完敗にニーナは完全に心を折られてしまったようだった。
「仕方ない……」
ガンクスが立ち上がる。
「次はこの俺が相手になろう。チェスは昔から得意だったんだ」
「オッケー」
「いや、キングだけじゃなくても良い。普通にやろう……俺は、強いからな」
■■■■■
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!勝ったぞォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!」
ガンクスがガッツポーズを見せる。
ガンクスの最初の一戦からすでに一時間。
30戦目で僕は今日初めて黒星を上げた。
ちなみに僕の持ち駒はキングだけだ。そして、あえて接戦を演じ、最終的に僕が負けるように試合を操作しての敗北だ。
ふふふ。僕も手加減がうまくなったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます