第7話
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
耳元で前世からの付き合いになりそうな目覚まし時計が鳴り響く。
闇の中に囚われていた僕の意識が浮上してくる。
僕は未だに鳴り響く目ざまし時計を叩く。
リンッ
僕に叩かれた目ざまし時計は甲高い音を立てて止まる。
しかし、僕が叩いたときの勢いが強すぎたのか目ざまし時計が置いてあるミニテーブルから目覚まし時計が落ちてしまう。
リンッ!とさっきと全く同じような音を立て、跳ねる。
三度目はない。目ざまし時計は血の影に落ち、呑み込まれていく。
「ふわぁ」
僕はベッドから体を起こす。
「はぁー」
僕はため息をつく。
「あー」
僕は頭を振る。
記憶を、感情を蝕むものを振り払うように。
……まだ消えない。蝕んでいる。
蝕み続けている。
だから寝るのは嫌いなんだ。
普段は抑え込んでいる負の感情が、目を背け続けている負の感情が、寝ている時は拒否できない。拒絶できない。
寝なければ良いって話なんだが、前世人間として暮らして来た記憶を持ち、前世寝ていることが多かった僕にとって寝ないということはそれだけでストレスになるのだ。寝てもストレス、寝なくてもストレス。クソだわ。ほんと。
「ふー」
僕はベッドから降りる。
「んー」
僕はゆっくりと体を伸ばす。
今の僕は吸血鬼としての肉体を持っている状態なので、体を伸ばす必要なんて無いんだけどこれはもう習慣である。
「『失せろ。僕は僕だ』」
一言。
たった一言。
蝕み続ける負の感情を散らす。
「はぁー、面倒」
重い溜息を吐く。
「束縛血界」
吸血鬼としての肉体、ステータスを封じる。
感知能力が一気に狭まり、体が重くなる。
「だる……」
今度は気持ち悪くなるような重だるさが僕を襲う。
本当に気持ち悪い。吐きそう。
パンッ
自分の顔を叩く。
どんどんマイナスの方向に沈んでいく自分を鼓舞するように。
「頑張るかー」
今日は修学旅行の初日。
そんなことを考えている暇なんて無い。重だるい気持ちのまま行くわけにもいかないし、こんな状態でみんなの前に姿を見せるわけは行かない。
あぁー。
いつもより憂鬱だ。気持ちが沈んでいく。
「あぁ」
僕はパジャマを脱ぎ捨て、制服に手を通す。
洗面所に向かう。
「ひっどい顔」
洗面所に置かれている鏡を見て僕は呟く。
本当にひどい顔をしていた。僕は顔を水で洗い流す。
「ふー。頑張るかぁー」
僕はゆっくりと動かし、今寝泊まりしている宿のドアを開けて外にでた。
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