第4話
「……なんでそんなに疲れているの?」
「んんんんんん!!!」
「ギリギリ」
僕はマリアお姉ちゃんに頬ずりされ、ルトに嫉妬の視線を向けられながら尋ねる。
妙に疲れたような表情を浮かべている聖女たちに。
ちなみに彼らはすでに僕が吸血鬼であったことなんて忘れている。僕が記憶を封じ、都合の良い記憶をねじ込んだからだ。
闇魔法って便利だね!
彼らにとってあの事件は領主様を操っていた吸血鬼と戦い、ボロボロになっていたところで教会の異端審問官たちに助けられ、撤退した。って言うことになっている。
僕が吸血鬼として戦ったことも、僕が領主を殺したことも覚えていないわけだ。
そして、ガンジスの上。教会は完璧に僕が任せた仕事をこなしてみせた。
あの事件の情報操作を完璧に行ってくれた。
あの事件は表向きには『吸血鬼に操られていた領主は最後に吸血鬼の支配から逃れ、王様に援軍を頼む。そして援軍として駆けつけた王国が誇る勇者たちと教会の戦力が吸血鬼を見事討伐した!』ということになっている。吸血鬼と吸血鬼の熱いバトルはなかったことになっている。
僕の姿を見た領民たちもいるが、彼らは教育を受けていない馬鹿なのである。教会の言うことに疑問を唱えることはない。吸血鬼である僕のことを異端審問官であると勘違いしているだろう。……人殺して血を飲んだけど。結構無理があるような気がするけど、それを納得させる教会の威光はやっぱりとんでもないのだろう。
教会とだけは敵対したくないね。
相手にすると一番面倒だ。
ちなみに、僕が記憶操作をしようと提案したのだが、却下された。いくら王様でもルトたちへの記憶の操作を認めても、流石に民の記憶の操作は許してくれなかった。
ちなみに僕は王様と教皇から自分の正体がバレた時、バレそうな時は闇魔法で記憶を操作し、意識を奪ったりすることは認められている。
変えた記憶の内容などはちゃんと報告しないといけないし、洗脳などは認められていないんだけど。
ルトたちを完全に洗脳してただの駒として使えたら楽なんだけど、そこまでは認められていない。
そんなことをしたら教会から許可が降り、全力となったガンジスが僕を完全に殺し尽くすだろう。
僕の抵抗などほとんど意味はないだろう。
ボコボコだぁ。
「えっとね」
光の聖女が僕に向かって話し始め、睨み合っている雷の聖女と水の聖女に苦笑しながらちらりと視線を向ける。
「修学旅行でちょっと色々あって……」
何があったのか。それを光の聖女は話し始めた。
……マリアお姉ちゃんはいつまで頬ずりしているの?
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