第1話

「よし。それでは今日から修学旅行の諸々について話していくわよ」

 

 教卓に立った担任の先生が話し始める。

 ちなみに担任の先生は試験のときにお世話になったマリア先生である。マリアお姉ちゃんと名前が同じで、ややこしい。

 なんでゴールドクラスの担任の名前が火の聖女と同じ名前なんだ。ゲーム制作者は頭おかしいんじゃないか?

 

「まずはどこに行くかの話よね」

 

 マリア先生の言葉にクラスの生徒がざわめき始める。

 行き先は重要だよね。

 まぁ僕は行き先を知っているわけだけど。僕には独自の情報網があるので、何処に行くのかは王様に会ったあの日よりも前から知っているのだ。

 ゲームでも行くしね。


「どこだと思う?」


「さぁ?」


「だが毎年豪華だぜ!」


「空中都市とか、超古代文明の遺跡とか、世界樹の森とか、船上都市とか」


「おぉ!流石はファウスト王国最大の学園!すごい行き先だな!」

 

 ワイワイと生徒たちは話を膨らませる。

 ……この学園結構すごいところに行っているんだな……。どこも行くの大変だぞ……。

 

 僕や教会でも未だに知っていることが少ない超古代文明の遺跡。閉鎖的な種族、エルフが暮らしている世界樹の森。前世の地中海のような海のど真ん中に巨大な幾つもの船が集まり作られている都市。どれもこれも行く難易度が高すぎる。

 

 遺跡は危険だし、エルフは基本的に排他的で、人間と関わろうとしない。海上都市はこの中だと比較的に簡単だが、プラチナクラス、ゴールドクラス、シルバークラス、ブロンズクラス、アイアンクラス、ストーンクラス、ウッドクラスの生徒全員が海上都市に行くための船を用意するのは大変だろう。


 その中でも一番やばいのは空中都市だ。

 空中都市は本当に浮いているわけではなく、この大陸の中央にある巨大な山の頂上に作られた都市だ。『目的』があって作られた都市なのだが、今はその『目的』を達成しているため、ただの不便な都市だ。

 登山をすることになるのだろうが、標高も高く道中は魔物もいる。行くのに苦労するだろう。

 景色は絶景なので、行く価値はあるだろうが。

 それは他の場所も同じだ。

 行くのは大変だが、実際に行けばこれ以上ない体験と学びを得ることが出来るだろう。


「今年の行き先は和の国よ」


 マリア先生が行き先を告げる。

 

「「「……」」」

 

 クラス中が静まり返る。テンションが急激に下がっていく。

 なんというか……みんながびみょーという表情を浮かべていた。

 まぁ先の4つよりも遥かにびみょーだろう。

 和の国で起こることは超エキサイティン!!だけどね。

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