第60話
視界が真っ白に染まり、耳が正常に動かなくなる。
轟音。
何も聞こえないがおそらくどうしようもないくらいの轟音が響いた。
ピシッ
その爆風はこの世界を覆う、僕が喰らいし怨念を、怨念によって隔離された世界を、破壊する。
破壊し尽くす。
爆風は破壊された僕が喰らいし怨念とともに僕の中へと入る。再び一つとなり、力へと変換される。
「ふぅー」
僕はゆっくりと息を吐く。
潰れた命は3つか。まぁこのくらいだろう。3つ程度じゃ何も問題ない。
それは、僕の前世の日本人であれば知らない人はいないであろう核爆弾だ。
僕は『???』の能力なのかは知らないけど、記憶の中にあるのものを複製し、こっちの世界に具現化させるというとんでもない力を持っているのだ。
銃や剣などもその力によって出したものだ。
「あー、疲れた」
僕はゆっくりと息を吐き、ちょっと離れたところで倒れているガンジスに近づく。
核爆弾による影響はない。あくまで核爆弾は僕の固有世界とか。まぁ僕もよくわかっていないこの世界とは違う『黄昏の空間』内で起きたことであり、現実世界とは関係ない。
この場に僕とガンジスが戦った後なんて残っていない。
「殺せぇ。俺の負けだぁ。吸血鬼」
「何ほざいてるんだが。お前を僕が殺そうとしたらお前の本来の力が開放されるでしょうが」
僕が必死こいて倒したガンジス。こいつは今。その100分の1程度の力しか使えていない。
教会から認められた時、もしくは自分の死が近づいた時でないと力が使えぬように制限を受けているのだ。
自分の死が近づいた時、と言っても自殺や、力を使えない自分よりも圧倒的な格下からの攻撃によって死にそうになっても、力が使えるようにはならない。
だから、ギンザラに自分を殺させたりしていないのだ。
「僕がお前を半殺しになるように手加減した意味がなくなっちゃうでしょうが」
間違えて殺しそうになったとかがないように、核爆弾にガンジスを死に追いやるほどの威力が出ないように束縛血界を使って制限をちゃんと設けていたのだ。
「……そうか。教皇ストレーターはそこまで……」
「まぁ僕と教皇の間には結構色々あったんだよ。色々ね」
「そうか。……そうか」
ガンジスは無言で自身の治療を開始する。
「んじゃ僕は行くよ」
治療の途中。僕はガンジスに声をかける。
治療が完了したと共にラウンド2スタートとか冗談じゃない。
「後始末はよろしくね」
僕は一方的にガンジスに告げ、その場を離れる。すでに帰っているであろう勇者メンバーの元へ。
全く。いきなり襲われるとか最低。最悪。教皇に文句を言いたいところだが、僕にそんなことを話す権限は残念ながら無い。マジで犬でしかないのだ。僕は。悲しいね。
全く吸血鬼の地位向上を願うばかりだよ。うん。
そんなことは絶対に実現しないだろうけどね。
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