第59話
どうするどうするどうする
こんなにも無理だとは思わなかった。力を封じられた今の状態でも霧化を完封出来るとは思わなかった。
うーん。
これはちょっとやばいかもしれない。……何個か命飛ぶかもしれないけど、あれをするか。このままだとすべての命こいつにとられそう。
あれで無理ならもう無理だ。
「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
後はとんでもない速度で僕との距離を詰めて剣を振ってくるこいつをどうするか、だよな!
「『日は落ちる』」
僕はなんとか逃げながらちょっとだけ特別な詠唱を開始する。
「『すべてを焦がす大いなる日は汝を閉じ込めん』」
世界は一気に明るくなる。
「『束縛血界』」
雲を押しのけ現れた巨大な血の球体。
それはガンジスを襲い、覆い隠す。
「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
剣閃が煌めく。
巨大な血の球体が真っ二つに切られる。
「なっ!?くっ……」
血の球体から脱出しようとするガンジスを逃すまいと血の球体は再生し、血の触手でガンジスを捉えようとするが、全て無意味。
鬼気迫るガンジスの剣閃は全てを断ち切る。
再生を許さず、血の触手も絶たれる。
「嘘!?」
あっさりと束縛血界を破ったガンジスに僕は驚愕の表情を作り、叫ぶ。信じられないと言わんばかりに。
そしてそのままぐんっといきなり速度を上げ、僕の方に突撃してくる。
「やっば!『転か』」
僕は慌てて『転雷神』を発動しようとする。
「遅いわい」
だが、遅い。
僕が『転雷神』を使用する暇もなかった。
ガンジスの剣が僕の心臓を貫く。
祝福が此れ以上無いくらいに込められた銀の剣が。
ガンジスの銀の剣は血の殆どを束縛血界に回し、心臓の防御にあまり血を裂けていなかった僕の心臓を簡単に貫いた。
「ぐふっ」
僕の口から血が漏れる。
吸血鬼であっても人体の構造は人間と同じだ。
「これで二つッ!後幾つ残っている!?十か!?百か!?」
「くくく」
僕はガンジスの言葉を嘲笑う。
一つの命を奪ったと思っているガンジスを。
「ねぇ知っている?やろうと思えば心臓の位置をずらすことくらい造作もないんだよ?」
心臓の位置はおへそじゃないんだよ?心臓ってのは胸の中央にあるんだ。
僕はガンジスに抱きつく。
逃さないように。
「捕まえた」
「……ッ!?」
僕はユニークスキル【欺虚者】の能力を解除する。【欺虚者】。その能力は単純で相手の認識を書き換えるというもの。
その能力を解除した今。
ガンジスにも見えていることだろう。
空に浮かぶ一つの爆弾が。
カチッ
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