第50話

「オロオロオロオロオロオロオロオロ」

 

 大いなる大地に芽吹く木の下。

 僕はゲェゲェ嘔吐していた。

 あれから3時間。

 ようやく当初予定していた野営地に辿り着いた。

 

「ふぅー」 

 

 僕はあまりにも辛かったので、封印を解く。

 吸血鬼としてのステータスと強靭な肉体を。

 今まで僕を蝕んでいた苦しみから僕は開放される。


「よっと」

 

 僕は再度封印を施す。

 気持ち悪さはもう残っていない。


「……ごめん……」

 

 僕は少し離れたところで野営の準備をしているルトたちの元に帰ってくる。

 あえて青白い顔を浮かべている。

 

「もう大丈夫なの……ってなにそれ!?」

 

 マリアお姉ちゃんが僕が連れてきたカバとアリクイを足して二で割ったような見た目をしている魔物を見て驚愕の声を上げる。

 

「ミネ、ね」

 

「あ、よく知っているね」

 

 僕が連れてきた魔物、ミネを見て普段はあまり喋ることがないサーシャがポツリと呟くように話す。


「ん。有名」


「有名なの?こいつ?」


「まぁ冒険者たちの中ではかなりの知名度を持っているよ。なんて言ったて最高の魔物って言われているんだからね」


「最高の、魔物……?」


「そ。こいつは独特の汗をかくんだよ。こいつの汗は人間にはなんともないけど、虫とかは大嫌いらしくてこいつがいるだけで虫さされを気にする必要がなくなるんだ」


「ほんとでござるか!?」

 

 水の聖女、リリネが驚愕の声を上げる。

 和の国。

 日本に似ている、というか昔の日本そのままの国なのでかなりの親近感を抱いている国だ。

 語尾がござるとかいかにも、って感じだよね。

 

「ほんとだよ」


「それは便利な能力にござるね!」


「うん。だから最高の魔物って呼ばれているんだよ」


「物知りでござるな」


「まぁ僕は温室育ちじゃないからね。こういう荒事には慣れているんだよ」


「じゃああの馬車での醜態はなんなのよ?」


「ん?あぁ、奴隷だったからね。奴隷に馬車なんて贅沢品なかなか使わせて貰えないんだよ。馬車での移動のときはとにかく狭い空間に奴隷を押し込むから揺れとかそれ以前の問題だったから」


 僕はそれっぽいことを言ってごまかす。


「あ……ご、ごめん」

 

 しかし、僕が奴隷であったことはすでに周知の事実。

 気まずくなったのかさっと視線をそらした。勝手に誤解して物事がうまくいってくれる。奴隷だったという設定、いいな。

 

「まぁそういうことなの!馬車では頼りないけど、こういうサバイバルは得意だからどんどん頼ってくれていいんだよ!」

 

 僕は胸を張って自信満々と言った様子を見せ、告げた。

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