第48話

 アウゼス。

 ゲーム上のアウゼスが死んだのはかなり初期の頃だ。

 ゲームの主人公、勇者たちはまず学園に入学し、クラス内にいる第二王女と仲良くなる。

 その後に政府の方から学園を通さない初めてのクエストを依頼させる。

 そのクエストにアウゼスがついていくのだ。

 任務の途中でアウゼスは突然勇者たちに襲いかかってくる。そして、その戦いの途中でアウゼスはアンデッドが一種、ゾンビとなり勇者たちにとって初めてのアンデッドの戦いが始まる。

 ここでアウゼスは倒され、登場はおしまいとなる。

 その後は謎の仮面のヴァンパイアが現れ、そいつと戦闘状態に。

 所謂負けイベントである仮面のヴァンパイアとの戦闘に負けた後、殺されるギリギリのところでガンジスが助けてくれる。

 というのがざっくりとしたゲームのシナリオだ。


「頼む。俺らの任務を手伝ってくれ」

 

 僕は頭を下げるルトを見て顔を引き攣りそうになるのを我慢する。

 ルトたちの話す任務。

 それは奇しくもアウゼスが殺された任務に他ならなかった。

 ……マリアお姉ちゃんがいきなりクエストに行こうとか、あそこに潜入して、犯罪の取り締まりをしようとか。

 ゲームとはかけ離れた動きをしていたから何らかの影響があり、ゲームとは全然関係ない動きになったのかと思っていたけどどうやら違うようだ。


「いいよ」

 

 僕は了承する。

 ここで断ることは出来ない。

 あの仮面のヴァンパイアはとある組織のヴァンパイアに違いないだろう。

 多分だが、ゲームのアウゼスはとある組織と協力関係にあったのだろう。どういう話があったらアウゼスがあんな悪役かませムーブを行い、ゾンビとなってルトたちを襲うことになるのかわからないが。

 だが、今の世界は残念ながら僕はルトたちサイドについてしまった。何を間違えたのかはわからないけど。

 アウゼスというキャラの動きに僕は合わせられなかったのだ。

 僕がルトたちサイドについているのだから、とある組織も全力で物事に当たるだろう。

 ルトたちを襲うのはおそらくヴァンパイアレベルではなく、エルダーヴァンパイアレベルとなるだろう。

 ここで僕がついていかなければルトたちは殺されてしまうだろう。

 僕が人類の守護者となってもいいが、この先の敵もルトがどういう力に覚醒するかもわからない状態で、その決断を下すのはまずいだろう。

 僕は今まで通り人類存続のため、ルトを人類の守護者として育てることに全力を注いだほうがいいだろう。


「ほんとか!?ありがとう!」

 

 ルトは顔を上げ、笑顔を浮かべる。

 そして、ルトは僕の方に片手を伸ばしてくる。


「一緒に頑張ろうな!」


「……あぁ」

 

 僕はルトの手をとった。

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