第39話

 響き渡る。

 剣と剣がぶつかり合う音が。

 この場に響き渡っていた。


「やぁぁぁああああああ!」

 

 凄まじい気迫と力を持って放たれた剣を前に僕は吹き飛ばされる。

 

「なるほど。衝撃を後ろに飛ぶことで減らしたか。だが全ては受けながせまい」

 

 僕の目の前に立つ少女が剣を構える。

 小柄な見た目とは裏腹にその手に握られているのは大きな剣だ。

 この僕の目の前に立っている女性の名前はアリシア。この国の第二王女様だ。

 イウス流大剣術というこの国で一番人気がある大剣術、大剣術の中でも最強と名高いイウス流大剣術を収めている学生の中で最強と呼ばれているほどの武道派である。

 持っている魔法属性は光。

 光魔法もかなりの腕前だ。

 今、プラチナクラスで一番強いのがこの少女なんだそうだ。

 僕はそんな少女と戦わされていた。

 その理由は簡単。

 自分の護衛の能力がどの程度のものか自分が実際に戦って図るためらしい。……こんな少女と戦うことになるのなら護衛なんか受けなければよかった。

 

「ほら、立てよ」

 

 未だ吹き飛ばされて転がっている僕に言葉を投げかける。

 

「へへへ」

 

 僕はそれに対して不敵な笑みを返す。

 

「なんだ?かの有名な女傑はぶっ倒れているただのガキにビビって動けないのかい?」

 

 挑発を返す。


「……いいだろう。確実にねじ伏せてやる!」

 

 あっさりと挑発に乗った第二王女様は大剣を振りかぶり僕に向かって突撃してきた。


「ほいさ」

 

 僕は自分の手に握っている刀を投擲する。

 

「愚か!自ら武器を手放すなど!勝負を放棄したようなものだ!」

 

 第二王女様は僕の投げた刀を弾き飛ばす。


「なっ!?」

 

 それに対して僕は驚愕に満ちた表情を浮かべる。


「ふん!」

 

 あんなくだらぬものが貴様の策か!といった感じに怒っていそうな第二王女様は感情のまま豪快に大剣を振り下ろした。


「ほっ」

 

 僕はその一振りを避ける。

 あんな大ぶり僕に当たるわけがない。あれは早く動けないような人間に対する一撃であり、僕のようなスピードタイプに向けるような一撃じゃない。


「ほい」

 

 僕は第二王女様の首元に隠し持っていた短剣を突きつけた。


「なっ!?」


「はい。僕の勝ちね。卑怯なんて言わないでよね?殺し合いに卑怯もくそもない。生き残ったものが勝者なのだから」

 

 全く。隠し武器の一つも警戒しないとは。

 いくら強いとは言ってもまだまだ甘いよね。

 大して強くもない裏の人間にあっさりと殺されてしまいそうで怖いよ。僕は。

 あの組織、吸血鬼連中を相手取るだけでも大変なんだから出来るだけ第二王女様は自分の身を自分で守ってほしいよね。

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