第38話
「んー!!!美味しい!!!」
僕は目の前の料理を頬張る。
久しぶりの食事。至福のひとときですわ。
昔はどんな高級料理もカップラーメンと同じくらいの味しか無くて色々としょぼくれたものだが、最早慣れた。
「……そうか」
僕の目の前に座るルトが不機嫌そうな顔をして告げる。
「ねぇ、睨むの辞めてくれない?美味しいご飯が気持ちよく食べれないじゃん!」
「あ!す、すまない」
ルトは僕の一言に慌て、引き攣った笑顔を浮かべる。
うんうん。ぶっちゃけ不機嫌そうな顔も引き攣った笑顔も変わらん。
どっちだろうがご飯は美味しい。
「それで?僕に何の用?天下の勇者様が」
「……ふぅー」
僕がルトのことを勇者と呼ぶとルトは若干嫌そうな顔を浮かべ、息を吐く。
「ルト……?」
「いや、なんでもない。……えっとな。お前何をした?」
「ん?」
ルトは真面目そうな表情を浮かべて僕に問う。
「俺は確かに聖の魔力を使ってレッサーヴァンパイアの触手の動きを止めた。いや、止めようとした。だけど何も出来なかった。出来ていないはずなのだ。だけど、お前は心臓を貫いた。お前は何だ?何をしたんだ?」
「……え?僕は普通に剣で貫いただけだよ。何もしていない」
「……いや、違うんだ。俺は細かな話を聞きたいわけじゃないんだ。聞きたいわけじゃないんだ」
……闇魔法は要らないかな?
うん。
まぁ軽いのくらいはかけておくか。他人にこのことを話さないにするくらいの軽めのやつ。
「ただ君に頼みたいことがあってね」
「ん?何?」
「王女様の護衛依頼。それを君に頼みたい」
「王女様の護衛依頼?」
……また護衛依頼?
もうマリアお姉ちゃんの護衛依頼まで受けているんだけど?僕。
「あぁ、そうだよ。うちのクラスに第二王女様が在籍していてね。そのための護衛を俺らが王様に受けているんだよ。今。だけど今は俺らだけじゃちょっと守り切る自信がなくてね」
……確か、第二位王女様って普通に強くなかったけ?
バリバリの武闘派だったような……?
護衛なんかいるのか?
「まぁ王女様は俺らよりも全然強いから護衛がいるのかどうかは不明だけどな」
「まぁ、うん。なるほどね。でも僕はゴールドクラスなんだけど?」
「いや、お前は俺よりも強いだろう。きっと」
「勇者様にそんなことを言われて嬉しいよ」
僕は口元に食事を運ぶ。
最後の一口を。
……今の状態じゃ勇者よりステータス低いけどね。剣術もそこそこ程度だし。
「ごちそうさまでした」
僕は両手を合わせる。
「じゃあ僕はもう帰るね」
「え?」
僕の一言にルトは固まる。
「護衛依頼はまぁ別に受けていいよ。美味しくご飯を食べてもう眠たいからもう寝たいんだよ?じゃあ僕はこれで」
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