第37話
僕と男
吸血鬼の中でも上位の実力を持つ二人。
怪物。
化物。
吸血鬼。
震える。震える。震える。
空気が。空間が。星が。
闇の王。昏き闇の王。常闇に生きし者。死を拒む者。
闇は喝采し、光は恐怖する。
悲鳴が。滂沱が。慟哭が。
闇を迎え入れる。
彼らは闇の王。死者の王。吸血鬼。
血が舞う。
空間が赤に染る。
二人の体から真っ赤な液体が流れ出し、床を沈める。
ぽちゃん
「ふっ」
男の微笑とともに魔力が霧散する。
この場に渦巻いていた膨大な魔力が。
闇が消える。鳴りを潜める。
血が消える。
この場には何も残っていない。
「ここでお前と戦うのは得策じゃないな。君にとっても俺にとっても」
「だろうね。僕は君に負けるつもりもないしね。下手に僕に手なんか出したら怖い怖い男が来ちゃうしね?」
僕は少々特殊な吸血鬼なんだ。
相手の方が格が僕よりも高くとも負けないし、一対一なら僕が勝つ確率のほうが高いだろう。
まぁ今天井裏とか床とかに潜んでいる吸血鬼たちが出されたら負けるけど。
それでもガンジスが来るまでの時間は稼げるだろう。
「ふん!つぐつぐ不思議な吸血鬼だなぁ。お前は。今だヴァンパイアの癖してエルダーヴァンパイアに匹敵する力を持った吸血鬼。そして、人間風情の威を借りることを厭わない吸血鬼らしくない精神。お前が何者なのか。酷く興味が湧いてくるよ。あの酷く傲慢な男が一体どこからお前を拾ってきたのか……」
「さぁね?」
僕には生まれたときの記憶など無いからそんな事言われてもわからない。
あの人も死んじゃったし。おそらく僕が何者なのか。誰から生まれたのか。それを知る日は来ないだろう。
親ってものに憧れがあったんだけどなぁ。
「じゃあ僕はそろそろお暇させてもらうよ」
「はいはい。……だが」
再び魔力がほとばしる。
男の圧が増す。
「俺らを敵に回したことせいぜい後悔するがいい」
「はいはい」
それに対して僕はひらひらと手を振る。
「あ、話つまらなかったからお金よこせよ。お金。約束でしょ?」
「ちっ。がめついなぁ。お前も。というか、この話をつまらない認定しやがるお前を俺は信じられねぇよ。全く。……ほらよ」
男は僕に向かって金が入った袋を投げる。
「あんがと」
僕はたんまりとお金をもらい、満足してこの場所を去った。
ふふふ、もうけもうけ。
結構お金ないから困っていたんだよね。
裏組織に顔が広かったとしても、裏組織の人たちが僕にお金くれる
ふふふ、何食べようかな?どんな美味しいもの食べようかな?
一週間ぶりのお食事だ!
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