第34話
触手が蠢く。
大地が裂け、轟音が響き渡る。
高速でうねりながらこちらへと触手はこちらへと伸びてくる。
「きゃっ!」
近距離戦闘が得意な僕やルトならともかく、マリアお姉ちゃんがこの触手を相手に戦えるとは到底思えない。
「大丈夫?」
僕の方に向かってくる触手たちをすべて回避し、すぐにマリアお姉ちゃんの元へと駆けつける。
剣を三度振るい、マリアお姉ちゃんに襲いかかっていた触手を切り飛ばす。
「アウゼス!」
「怪我はない?」
「うん!大丈夫!」
「それは良かった。来るよ!」
僕はマリアお姉ちゃんに警戒を促す言葉を告げ、剣を構える。
「あぁぁぁぁぁぁああああああああ」
四方八方より迫る触手たちを剣で切り捨てていく。
だがしかし、血によって作られた触手はすぐさま再生し、再び僕達に猛威を振るう。
「火精よ、我に力を!『オーバーヒート』」
マリアお姉ちゃんも得意の炎魔法で大規模に触手を焼き払う。
だがしかし、マリアお姉ちゃんが魔法で焼き払っても灰の状態から再び生成してしまう。
当然だ。
吸血鬼の血を消滅させるなら、光魔法の『聖の魔力』か、炎魔法の『聖炎』、水魔法の『聖水』でないと消滅できない。
マリアお姉ちゃんの使っているただの炎魔法じゃ吸血鬼の血に対抗することは出来ない。
まだマリアお姉ちゃんは『聖火』を満足に使えないようだった。
「どうすればいい!?」
マリアお姉ちゃんが叫ぶ。
ジリ貧。相手は無限に再生し続ける化け物。それに大してこちらは戦えば戦うほど消耗していく。
時間が経てば経つほど不利になるのはこちらだった。
シュッ
相手の触手が僕の頬に当たり血が垂れる。
ぽちゃん
垂れた僕の血は触手の中に入って消える。
「俺が止める!俺の聖の魔力であいつの動きを止めて見せる!その間にお前があいつの心臓に剣を突き立ててやれ!」
ルトが僕に向かって叫ぶ。
それと同時にルトの体が光り輝き、ルトは剣を振りレッサーヴァンパイアのもとに向かっていく。
「ん」
僕もルトと同じようにレッサーヴァンパイアに向かって飛び込む。
触手は聖の魔力によって動きを鈍らせてはいるものの、僕を近づけさせてくれるほどのものでもない。
「我は吸血鬼」
ボソリと小さくつぶやき、吸血鬼としての能力をほんの少し開放する。
呑まれる。
レッサーヴァンパイアの触手はたった一滴の僕の血によってその制御を奪われる。
僕は触手を操作し、違和感なく僕がレッサーヴァンパイアのもとにたどり着けるように操作する。
「行けッ!」
「ほっ」
僕はルトの熱い声援を受け、レッサーヴァンパイアの心臓を貫いた。
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