第31話

「ねぇ、いつまで僕を抱えているの?」

 

 僕は未だに僕を抱えているマリアお姉ちゃんに視線を向ける。

 もうすでに人間の住まう領域を越え、アンデッドが住まう領域に到達していた。

 この場所は瘴気に汚染され、魔力抵抗が低い人間が来れば気絶してしまうだろう。

 まぁ、不死者である僕には実家のような安心感を与えてくれるんだけど。

 すでに遠くではあるが、アンデッドの姿もちらほらと見えるようになっていた。


「何を言っているの!?私が守ってあげなくて誰が君を守るの!?」


 マリアお姉ちゃんが信じられないと言ったような視線を向けてくる。

 ……何を言っているの?


「別に僕は平気だから……ふんさ!」

 

 僕は強引にマリアお姉ちゃんの手から離れる。


「僕はゴールドクラス暫定一位の男だよ?舐めてもらっては困るんだけど!」

 

 僕は収納魔法から一振りの剣を取り出す。

 その剣は銀で出来ており、十字架を型取っていた。

 その剣を持っているだけでしゅわーと僕の皮膚が溶けていっていくのだが、これくらいなら何ら問題ない。

 ちょっと痛いけど。


「あぁぁぁぁぁああああああ」

 

 アンデッドの一種であるゾンビ共が汚ねぇうめき声を上げながらゆっくりと僕達の方に向かってくる。


「『アクセル』」


「あっ!?」

 

 魔法を発動し、一気にアンデッドの距離を詰める。

 そして、銀の剣を振るう。

 僕の剣はゾンビの首を切り落とした。

 ゾンビから溢れ出る返り血は僕が纏う雷にとって蒸発させられる。

 我ら吸血鬼の血は最強の武器である。彼らデスナイトの血は最恐の感染源のである。彼女らリッチーの血は最凶の魔道具である。

 アンデッドにとって血というのは特別なものなのだ。

 ゾンビはアンデッドの中でも最弱の部類の存在であり、小奴らの血は大した脅威でもないのだが、人間浴びると少しだけ体調を崩すらしく、人間は血を浴びないように細心の注意を払いながらアンデッドと戦う。その相手がゾンビであっても。

 ゾンビは多少の再生能力はあるが、他のアンデットほど理不尽なものではない。首を切られれば普通に死ぬのだ。

 

「すっご……」


「雷精よ、我に力を。貫け『ライトニング』」

 

 雷撃が走り、ゾンビを焦がす。

 魔法を駆使し、剣を振り、蹴りで相手の首を折る。

 僕はゾンビを一方的に狩り続けた。

 

「ふぅー」

 

 僕はほっと一息つく。

 人間程度にステータスを落として戦うの本当に大変。

 辺りにいた数十匹のゾンビは僕がすべて殲滅した。


「どう?ちゃんと僕も戦えたでしょ?守られるほど僕は弱くないんだよ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る