第27話

「新一年生いらっしゃい!」


「らっせーらっせーらっせっせー」


「ほんこらほんこらどっこいしょ」


「ちんへらほいしょらわっせっせー」


 ……え?何あれ?

 僕はゴールドクラスのための寮の前に集まっている人だかりを見て首を傾げる。

 というかあの意味わからない掛け声は何?キマっているの?

 ちなみにこの学園は寮制。どの制度も必ず寮で生活している。学年、クラスごとに寮が別れているので、かなりの数の寮がこの学園内に存在する。

 一つにまとめてしまえよ。って思うね。


「君が新一年生だねー」

 

 おそらく上級生と思われる人たちが僕達一年生を歓迎しているようだった。おやつを配ったり、花束を渡したり、様々ことをしていた。

 なんだろ?あれ?


「あ、アウゼス!やっほー」

 

 ニーナが僕に気づき僕の方に近寄ってくる。


「あの人だかりは何?」


「あぁー、クラス対抗戦に向けて強い人を探しているんじゃない?」


「……?」

 

 クラス対抗戦?え?なにそれ?

 僕は何が何だがさっぱりわからず首を傾げる。


「……先生の話を聞いていなかったの?この学校では学園武芸祭というのが開催されるの。プラチナクラス、ゴールドクラス、シルバークラスで一つ。ブロンズクラス、アイアンクラス、ストーンクラス、ウッドクラスで一つ。Ⅰクラスで一つ。Ⅱクラス

で一つ。Ⅲクラスで一つ。計5つのトーナメントに分かれていて、全学年合同、クラス対抗で戦うの」


「へぇー」


「個人戦とチーム戦があるんだけど、一年生にチーム戦に出場できる子がいるかどうか確かめているのよ」


「へぇー。チームって何人なの?」


「二人一組で全部で10ペアね」


「じゃあ二十人ってことか。その中に一年生が入れると思えないのだけれど」


「そうかしら?アウゼスなら入れそうだけど?」


「いやぁー、流石に無理でしょ」

 

 僕はニーナと喋りながら寮の方へと向かう。


「じゃあ僕は目立ちたくないから先に行くね?」


「え?」


「ちょっと!何処に行くの!」

 

 僕は途中でニーナを置いて走る。

 ごめんね、ニーナ。僕は心のなかでニーナに謝る。


「『サイレント』」

 

 闇属性の魔法を使い、自分の影を薄くすることも忘れない。

 悪いけど、僕の目的はあくまでも火の聖女、マリアお姉ちゃんの護衛。

 上級生と関わるつもりも、学園武芸祭というものに関わるつもりもない。

 面倒事はごめんなのだよ。

 僕だって色々なものを抱えているのだから。そんな雑事に構っている暇など無いんだよ。

 あの組織だって動き出したようだしね。

 僕は壁を登り、窓から自分の部屋へと入った。

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