第18話

「足元がお留守になっているよ」


 僕はさっきからほとんど動いていないパルちゃんの足を引っ掛け、優しく転ばさせる。怪我にならないように優しく、優しくだ。


「難しいかも知れないけど、足は止めちゃだめだよ」


「はい!」


 パルちゃんは元気よく頷き、立ち上がる。

 ふんすっ!とやる気をみなぎらせている。

 うんうん。やる気があるのは良いことだよ。

 まぁびっくりするくらいセンスはないんだけど。

 収納魔法の収納量も異常だが、戦闘に対するセンスも異常である。

 ……吸血鬼の力使ってちょくに学ばせる?

 いや、そこまでする必要も理由もないか。


「危ないですっ!」

 

 パルちゃんが切羽詰まった様子で叫ぶ。


「『サンダー』」


 僕は後ろも振り返らずに魔法を発動させて、僕の方に近づいてきていた魔法を撃ち落とす。


「危ないんだけど?」


 僕は後ろを振り返り、ニーナのことを軽く睨む。


「ごめんごめん。ちょっと手元が狂った」


 僕の方に魔法を撃ってきたニーナが僕に謝る。

 僕とパルちゃんが頑張って訓練している間、少し後ろの方でニーナを相手に、僕が準決勝で戦った男ガンクスが訓練しているのだ。

 まぁ訓練と言っても一方的にニーナがガンクスに魔法を撃ち続けているのだけなので、端から見たらただのいじめなんだけど。ガンクスは魔法耐性をつけるために魔法を食らい続けているのだ。まぁ、食らい続けても魔法耐性なんか上がらないけど。そんなんゲームに出てこなかったし。それでも本人曰く意味があることだそうだ。

 ……魔法をくらい続けてボコボコにされているガンクスがニーナに魔法の出来を評価して教えている姿は割と狂っていると思いました(小並感)。

 今は授業中。一週間前に行ったトーナメント上位4人である僕達はしばらくの間授業免除なのだ。授業のレベルが僕達のレベルに追いついていないのだという。

 パルちゃんはあまりにも弱すぎて、授業についていけていなかったので、僕と個人授業だ。

 ちなみに遠くの方で一人、ジースが訓練している。

 一緒にやろうと思って近づいたら、とんでもない眼力で睨まれた。


「すまない。迷惑をかけた」

 

 律儀なガンクスは自分が飛ばしたわけでもないのに深々と頭を下げる。


「まぁ別にいいよ。さしたる脅威でもないし」


「むぅ。それはちょっと私のプライドが傷つくんだけど!」


「知らないよ。手元を狂わせる魔法使いの腕なんてそんなもんでしょ?」


「ひどい!」

 

 この学園に入学してからもう一週間が過ぎ去った。

 僕はここまで何事もなく学園生活を送ることが出来ていた。

 当然勇者たちにも何の異常もない。一生懸命頑張って腕を磨いている。

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