第10話
入学式。
アホみたいに広い国立国防学園の敷地を早足で歩き、入学式の会場である大聖堂に向かう。
暫く歩くと、会場にたどり着く。
目の前にある深茶色の大きな木製の扉は、細かな彫刻が彫られた一級品。
流石というべきかなんというか、やたらと金が掛かっている。
下手に金をかけて大きな扉は重く、押すのにもやたらと力がいる。
……もう少しステータスを開放することにしよう。
中にはすでに数多くの人がいた。
別に生徒というわけではない。生徒たちのほとんどはまだ校門のところでわぁわぁ騒いでいてる。
いるのは来賓と思われる方々。
新入生の席と思われる椅子がずらりと並べられている一階を見下ろせるようになっている二階には数多くの人が。
最も多いのは教会の人間。確実に僕がいるからであろう。
アンデッドや異教徒を狩ることを専門とする異端審問官の連中や教会のエリート騎士団である神殿騎士、そして教会戦力最強である怪物中の怪物、人類最強、異端審問官第一席までいる。
どれだけの兵力を引っさげてやってきているんだよ。
教会とはとある取引を結んでいて、表立って僕を殺そうとしてくる奴はいないが、隙あらば陰で殺そうとしてくるし、何だったら上の命令を無視して僕のことを殺そうとしてくる。全く迷惑極まりない。
「お好きな席にどうぞ」
「はい」
大聖堂の入り口のところに立っていた女性が教えてくれる。
どこでも良いんだね。
まだスッカスカな席の方に向かい、一番うしろの端っこの席に腰を下ろす。
しばらく待てば人は満員。
たくさんの人の熱気ですごいことになっていた。
まぁ僕に熱さを感じる能力は持ち合わせていないんだけど。
「ふぉふぉふぉ」
不思議な笑い声が大聖堂に響く。
魔法を使っているのかその笑い声はよく響いた。
「初めましての人は初めてましてじゃのう。国立国防学園学園長のフォーカルじゃ。新入生諸君入学おめでとう」
いきなり笑い声を響かせ、話し始めたのは一人の老人。
突然壇上に現れた真っ白なヒゲを蓄えた老人がこの学園の学園長。
学園長の言葉に合わせて教師陣、来賓から拍手が巻き起こり、いきなりの登場にびっくりしていた生徒たちも彼らの後を追うように拍手をしていた。
それから。
学園長は何の面白みもない話を延々と続けた。異世界でも前世と同じように学校の一番偉い人が長々と話す文化があるのか。
唯一前世と違うのは生徒の熱量だろう。どの生徒も学園長の話を真剣に聞いている。……なんで?学園長が話していることなんてくっだらない世間話だよ?
意味がわからない。
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