第8話

 僕の目の前に座る男。

 ファウスト王国7代目国王、ベルモンド。


「いや、済まない。護衛のために招き入れた教会のものが勝手に暴走してしまって。後で私の方から抗議の方を入れておこう」


「あぁ、ぜひそうしてくれ」

 

 教会。ノーヌス教会。

 アンデッドを決して許さない狂信者共。僕はあいつら嫌い。普通に話通じない。


「小耳に挟んだんだが、我が国が誇る国立国防学園に君が入学するというのは本当かね?」


「うん。まぁ本当のことだね」

 

 僕は肯定する。


「そうか。そうかそうか。では、その国立国防学園に勇者並びに九人の聖女が入学するのも知っているだろうか?」


「あぁ。それくらいは知っている」

 

 それぞれの属性から愛され、神の加護を受けし7人の聖女。

 火の聖女 ファウスト王国出身 マリア

 水の聖女 和の国出身 リリネ

 風の聖女 ノーヌス教会出身 アンナ

 雷の聖女 アルメシア帝国出身 シーネ

 土の聖女 ドワーフ王国出身 ギリア

 光の聖女 ノーヌス教会出身 ミーニャ

 闇の聖女 終焉騎士団出身 サーシャ

 それにプラスして勇者バース。

 計8名全員同い年である。彼らは14歳なので、僕の二個上だね。

 彼らも僕と同じタイミングで入学する。まぁ僕が彼らの入学に合わせて入学したんだから当然なんだけど。


「本当ならば二年前に入学するはずだった、ということも知っているかな?」


「あぁ。勿論だとも」

 

 へぇ。そうなんだ。初めて知った。


「ふっ。そうか。流石ではあるな」


「そんなでもないよ。その理由までは掴めていないからね。理由を聞いても?」


「勿論いいとも。その理由は簡単。とある組織から我が国の聖女マリアの命が狙われていてね。護衛を探すのに手間取っていたのだよ」

 

 ……とある組織、ね。


「なるほど。それでは護衛は見つかった、と?」


「あぁ。私の目の前にいるとも」


「……へぇ、よくわかったね?」


「我が国の諜報部もそこそこの腕を持っているだろう?」


「あぁ、間違いないとも。ではその諜報部の顔に免じて依頼を受けてやろうではないか」


「おぉ。それはありがたい」


 ここで護衛のお誘いを断るのは悪手だろう。ここで断ったら勇者と聖女が入学してくれなくなってしまうだろう。それはかなり困る。

 僕以外にも護衛の一つや二つつけているだろうけどね。


「では対価としてあなたのやろうとしていることのお手伝いをさせてもらおう」


「あぁ、大丈夫だ。僕は無料で受けると言ったのだよ」


「いやいや、そういうわけにもいかないよ」


「いや、大丈夫だ。僕は君たちの諜報部の顔に免じて動くのだ。対価など貰えん」


「いやいや」


「いやいや」

 

 僕がやろうとしていることなんてないんだよ!ただの顔合わせじゃい!手伝えるもんなんてあるか!そう言えたらどんなに楽か。僕は少し憂鬱な気持ちになりながらも国王との会話を楽しんだ。

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