第7話
コツコツ
誰もいない真っ暗な廊下。
そこに靴の歩く音だけが響く。
本来ならば美しい装飾がなされた絨毯を優しく照らす陽の光を招き入れる窓はカーテンによって閉じられ、本来ならば壁に飾られた高価な絵画や装飾品を彩る蝋燭も火は灯されていない。
もう少し歓迎してくれても良いのではないだろうか?
別に僕は闇夜でしか生きられないわけではないよ?
そんな柔なヴァンパイアじゃないよ?日光が平気なヴァンパイアはヴァンパイアと呼べるのかどうかは微妙なところではあるけど。
僕は一つの部屋の前にたどり着く。
「入りますよー」
僕は扉を開ける。
そして─────
僕の視界は真っ赤に染まる。
僕が部屋に入ると同時に火魔法を打ち込まれたのだ。
「『神よ!我ら神の使徒に力を!闇のものに災いあれ!闇のものを払いたまえ!ホーリーカノン!』」
そのまま流れるようにアンデッドを払うかなり高位の光魔法を打ち込まれる。
しゅわぁー
僕の柔肌は光魔法の前に簡単に溶けてゆく。
ドンドン
ヴァンパイアが嫌いなにんにく入り煙幕が打ち込まれ、視界を奪う。
やめろッ!僕はヴァンパイアであること抜きににんにくが嫌いなんだよ!前世では絶対にステーキにはにんにくを入れない派だったんだよッ!
クッサッ!
「ぐふっ」
煙幕によって上手く姿を隠しながら僕に接近してきていた多くの戦士たちが十字架を象った銀の剣で僕を貫いた。
その銀の剣は確実に僕の心臓を捉えていた。
僕は口から血を吐く。
「ほいさ」
血は踊る。
血が舞う。
血に染る。
「よっこいしょういち」
僕は部屋に置かれた椅子に腰掛ける。
僕が腰掛けた椅子の前には僕によって頭が吹き飛ばされた女が転んでいた。
なかなか良いスタイルの女性じゃないか。
顔はないから美人なのかどうかはわからないけどさ。
パンッ
女性は破裂し血となり僕に溶け込まれていく。
僕に牙を剥き、返り討ちにされた戦士も魔法使いも等しく破裂し、血となり僕の元に流れ込んでくる。
人々は血となり、僕と同化する。
それに拒否権はない。それが世界のルールだからだ。
別にアンデッドである僕を倒そうとするのは当然のことだが、少々戦力が足りない。
最低でも国一つくらい持ってこないと。
こんな少ない人数じゃ何も出来ない。
それに僕に血を吐かせたらだめだろう。
血を一瞬で蒸発させる聖火くらいないと……。
……徒に兵を無駄にして何をしたいんだが。
彼らは何も出来ずに僕の血によって頭を、胴体を、命を吹き飛ばされたのだ。
……まぁ、もうそんなことどうでもいい。
「やぁ、何の用だい?」
僕はにこやかに目の前に座る老人に話しかけた。
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