第6話

 僕の後も試験は続いていく。

 僕と同じように他の受験者も召喚されたゴブリンと戦うのだが、ゴブリンを倒せた人は僕以外にいなかった。

 そもそも魔法を使うのが得意な魔法使いなんかはへっぴり腰で杖をぶんぶん振るだけで論外。

 近接戦闘を得意とする人たちでも、剣の持ち方など武器の使い方はある程度出来ているのだが、そもそも命がけの戦闘自体が初めてなのか殺気むき出しで迫ってくるゴブリンを前に腰が引けてしまい、思うように戦えていなかった。

 すべての受験生がゴブリンに自身が斬り殺されるギリギリのところでマリア先生に助けてもらっていた。

 漏らした受験生もいるせいでこの一室が少しアンモニア臭い。


「じゃあ次は魔法ね」

 

 マリア先生がノリノリで僕達の前で話し始める。


「魔法の試験は簡単。私に魔法をぶつけてきて。安心してちょうだい。あなたたちの魔法程度じゃ私を傷つけることなんて出来ないから。じゃあまずは君からね!」

 

 マリア先生はさも当たり前かのように僕を指差す。

 なんで僕が最初なんだ……。

 周りの受験生がどれくらい魔法使えるのか気になるのだが……。

 剣に関してはなんとかならこのくらいで手を抜いておけばいいかなというのが分かるが、魔法に関してはさっぱりわからない。

 僕は基本的に魔法使いと戦いになることなんてないし……。

 

「はい」

 

 内心の不満を漏らさないようにしながら僕は進む。

 ここでよくあるラノベの主人公みたいに『またオレ何かやっちゃいました?』ムーブをかますわけにはいかない。

 まだ僕がこの学園でどういう立ち位置に立てばいいのかわかっていないからだ。

 これで僕が最強キャラという立ち位置にいてはいけないキャラだったのだとしたら、目も当てられない。

 僕が目指すはどっちつかずのボジション。

 もしかしたらとんでもなく強いかも知れない?という疑いをもたせた一般生徒。

 剣技はそこそこの評価を得たから、魔法はちょい下くらいにしておくか。


 パン!

 

 僕は両手を合わせる。

 

 時が進む。狐につままれたかのように。


「なるほど……平均よりは少しした。あんな剣技を持ってなおこれだけの魔法が使えるとは大したものね」


「頑張りましたから」


「そうね。もっと頑張りなさい」


「はい!」


 僕は元気よく頷き、下がる。

 僕が使った魔法は闇魔法の一つである精神干渉魔法。この場にいる全員に僕が国立国防学園新一年生の平均以下の魔法を使ったという認識を強制的に植え付けさせたのだ。

 ……他の受験生に見るべき人はいないな。

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