第5話
「じゃあまずは誰からやる?」
「あの子が良いんじゃないかしら?」
マリア先生が僕のことを指差す。
「え?僕ですか?」
それに対して僕は驚きの表情を見せ、自信がないといったような様子を見せる。
あまり期待をもたせ過ぎるのもよくない。
「いいじゃない。私はあなた筋が良いと思うのよ。驚かなかったしね」
「……じゃあ頑張ります」
僕は一歩前に出て、剣を構える。
あくまでそれっぽく。僕はこの7年間で幾度となく剣士と剣を合わせ『学習』してきている。そんな僕が全力でやれば学生の域を越えてしまうだろう。
なのであくまでそれっぽく。
「もっと前に来てくれ。そこの線を超えるようにな」
「はい」
僕はガイア先生の指示に従い更に前に進む。
この一室の中央に白い線で引かれた大きな四角の中に入ると同時に魔道具が発動し、そこそこの出来の結界が出来上がる。
「じゃあ召喚するぞ」
先生の言葉とともにこの結界内に一匹のモンスターが姿を現す。
召喚されたのはゴブリン。
人型の魔物の中では最弱と言えるモンスター。
僕と同じくらいの身長で緑色の肌と長い鼻をもったキモい奴。
その手にはボロボロの剣が握られている。
……それにしてもすごい魔道具だな。
結構、というかかなりの品質の魔道具たちだ。
金がかかってんなぁ。
その割にやっていることはかなりしょぼいが。
「ぎゃぎゃぎゃ!」
ゴブリンがボロボロの剣を振り回しながら僕の方へ突進してくる。
その動きは隙だらけで、非常に遅かった。
「くっ」
僕はゴブリンの振るうボロボロの剣を受け止め、苦悶の声を漏らし、恐怖の表情を見せる。
そして、すぐさま覚悟を決めたような顔つきを作る。
ちゃんと先生に見えるように。
「やぁー!」
僕は勢いよく一歩を踏み出し、剣を振る。
力も速さも技術も乗せていないゴミのような一撃。
それをゴブリンはなんとか受け止めるも、ゴブリンはそれだけで簡単にバランスを失い転倒してしまう。
最弱のモンスターだけのことはあり、とんでもない弱さだ。
「はっ!」
僕は転んだゴブリンの首元に剣を突き刺す。
ゴブリンから血が噴き出し、僕を濡らす。
僕はそれに対して恐怖するような表情を見せた。
僕がゴブリンを倒したのにあわせて結界が解除される。
「よし、そこまでだ。確かに筋は良い。いきなりゴブリンを倒せたのはすごいことだ。誇って良いことだぞ」
「は、はい。ありがとうございます」
僕は若干声を震わせて答える。
そして、僕はその場を離れ、元いた場所に戻った。
「よし!じゃあ次は誰だ?」
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