第2話 希望の始まりと久しぶりの出会い
「はあ、、はあ、、」
息切れをしながらただ先の見えない階段をひたすら上る。一歩一歩上るたびに荒い吐息を吐きながら後ろに背負っているおもりの重さを感じる。
元々無いに等しい体力をじめじめとした夏の暑さと急な坂道によってじわじわと削っていく。もともと運動が得意とはいいがたかった自分の体は、高校に入ってからの帰宅部としての活動も拍車をかけこのような階段を上るだけで息切れを起こす病弱な体へとなってしまった。
「相変わらずキツイな。この坂」
あまりのキツさに思わずため息が出てしまう。それもそのはずこの坂の頂上にはこのあたりでも名の知れたそこそこ大きめな公園と霊園があるのだが、この坂のせいか公園の利用客はほとんどいないに等しい。もちろん霊園も例外ではなく、この山の頂上に用事がある殆どの人はこの山に敷かれている道路を利用して車で上る。
「バスが出てくれればいいんだけど...」
交通の不便さを恨む。
そんな願望を考えながら歩くたびに肩へと食い込むおもりは痛さと同時に重力を俺に感じさせている。もしもニュートンがリンゴを見る前に、リュックを背負ってこの坂を上ったら史実は変わっていただろう。
だがそんな地獄の時間もようやく終わりを告げることとなる。ようやく階段の終わりが見えたのだ。
コンクリートで出来た最後の階段を登り切り見慣れた広い大広場へと出る。少し古ぼけた遊具たち、錆びついている鉄のブランコは風に吹かれてきいっ、きいっと規則正しい音階で懐かしい
懐かしい景色を目の前に思わず感傷に浸っていたが、当初の目的を思い出し霊園へと向かう。
この霊園、円秋園は雄橋市が経営している公営霊園ではあるが、広さは1000区画と小規模のためあまり人の行き来が無い場所である。それに加えてこの交通の不便さも相まってお盆などの
霊園の門らしき場所を通り大理石でできた道を歩く。とりあえず墓が汚れていると思うので霊園を経営している場所へ掃除のためのたわしやバケツなどの掃除用具一式を借りに行く。
しばらく歩くと小さな白い建物が見えてきた。その建物の窓口に行き呼び鈴を鳴らししばらく待つ。すると奥から物音を立てながらスタッフの一人が急ぎ足でこちらへと向かってきた。
「すいません。お待たせしました。」
息を切らしながら来たお姉さんは僕にとって馴染みのある人物だった。
「あれ、史郎くん!」
驚いたような声を上げ体をのけぞらせたお姉さんはこの霊園の経営者の一人娘である
突然の訪問に驚いた様子さんは黒のビジネススーツを身にまとい髪を後ろで束ねていた。この姿は彼女が言うに
ただこの格好をした彼女は中性顔なイケメン男性にしか見えない。そのため仕事をしているとよく間違われて困っていると昔愚痴をこぼしていた記憶がある。
「久しぶりね~~。元気にしてた?ちょっと瘦せたんじゃない?ちゃんとご飯食べてる?何か困っていることない?何かあったら私を頼っていいのよ?今日久しぶりにご飯作りに行こうか?ついでに掃除も..」
そのイケメンな顔からは想像できないようなマシンガントークの数々。この相手に話す隙を与えない姿勢。まるで親戚のおばちゃんを相手をしている感覚に陥る。
「大丈夫ですよ
俺は2歳の頃両親が他界したその日から中学3年になるまで西城家でお世話になっていた。そのため様子ねえを俺は自分のお姉さんのような存在として慕っていた。様子ねえも俺を実の弟のように可愛がってくれた。
俺の叔父さんの頼みがあったからとはいえ、正直赤の他人であるのに殆ど身寄りのない自分をここまでよくしてくれた西城家族には頭が上がらない。
「あら立派になっちゃって~。ちょっと前まではお姉ちゃんおねえちゃんって甘えてくれたのに~」
そういって窓越しから俺の頭をやさしく撫でた。どうやら様子ねえの俺の記憶は小学校中学年で止まってしまっているらしい。
「今日は両親の墓参りに来たの?」
「はい...一応。」
そう答えると様子ねえは少し顔を下に向け数秒考えたあと優しい顔でこちらを向いた。
「私も一緒に墓参りしてもいい?」
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