第15話 錯覚


 この世界の攻撃魔法は、火、水、風、土、雷、氷と、主に6種類ある。そのそれぞれに初期魔法、中級魔法、上級魔法があり、初期魔法と上級魔法では威力が段違い。とはいえ、私は今、水属性の敵の弱点であるはずの雷の魔法を撃ち込んだ。この距離でまともに食らえばそこそこのダメージはあるはず。


 ……と思っていたが。


「はっ……!はははっ……!!ここまで虚仮にされたのはいつぶりか……!?もういい、すぐに殺してやる!」

 やっば。めちゃめちゃ怒ってんじゃん。


「ちょっと、全然効いてないじゃん!むしろキレててやばそうだよ!」

「おっかしいな……。水には雷ってのがゲームでも定石のはずなのに……」

 う~ん……。


「作戦失敗!てへ!」

「てへ!じゃ無いですよお!私たちおしまいです……!」

確かに割と絶望的な状況だ。相手が何をしてくるか———……


 と、その時。


「波打際・流」

 アクアスがやばそうな技名を言い放つと共に、大量の波が一点に集中し、光線の様になって襲ってくる。

 ってこれやばっ……!死…………

「琴葉さん、危ない!」


       ドン!!!


 ……え?オビエが、私を突き飛ばして……いや、庇って……?どうなった?

「バカな真似を。自らあの技を受けにいくとは……死んだな。」

「……は?し、死んだ...?」

「そんな……うそ…………」

「ん?はっはっはっ!仲間が死んだ途端元気が無くなったな!自分達は死にはしないと!安全であると!そう錯覚し、のうのうとここまで来た結果がこれだ!悲しくなるだろう?」


 ……そうだ。まだ私たちは、この世界の事を何も理解出来ていなかった。今までいた平和な世界とは違うんだ。命なんて、簡単に……あっけなく消え去ってしまうんだ。

「ごめん、オビエ……。私のせいで」

 自責の念にとらわれ、強い悲しみに襲われる。こんな感情は生まれて初めてだ。

「あ、あの。ぼく、生きてるんですけど……」

 そんな私に、オビエがとても言いづらそうに…………ん?


「……生きてる?」

「……ほんとだ」

「…………え?」

「は、はい。無傷です……」

「「「えええー!?!?」」」

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