第14話 「これの続きは?」
「ねぇ平塚。これの続きは?」
「今、俺が読んでる」
「えー」
ベットに寝転がり漫画の続きを催促するのは一人のカッコいい女の子である。手を伸ばす葵の手をげしげしと蹴る男の子は座椅子に座っている、平塚は呼んでいる漫画を手放す気はなさそうだ。
「ねーえー」
「お前は読むのが早すぎるんだよ」
「平塚が遅いんじゃなくて?」
「ついさっきお部屋にやって来た葵さん?既に何巻呼んだか数えてみな?」
そんな間も、葵は伸ばす手を止めない。
それに平塚も抵抗を辞めない。
激しい空中戦。
べしべし。げしげし……突如葵が起き上がる。
「あ、そうだ」
「あ?」
「一緒に見よう」
「……何言ってんだ」
「まだ最初のページじゃん。三十秒かして」
ぺらぺら。ぺらら。
そしてぴったり三十秒後。
「はい。続きから読んでいいよ」
「読んでもいいけど、集中できねえよ」
「ふむ、なんでだい?」
「葵さんがおんぶの形でのしかかっているからだね」
「じゃあ問題ないね」
ぺらぺら。ぺらぺら。
「ねえ」
「なんだ。遅いって言うクレームは受け付けてないぞ」
「いやそうじゃなくて……なんかあるでしょ?」
「慣れた」
「むー」
不満そうな顔をする葵だが、次のページがめくられると意識はそちらに移ってしまった。
一方、真顔で過ごしている平塚だが、内心は距離が近い幼馴染に対して心臓は爆発寸前だった。
幼馴染という関係でありながら自分に好意を見せてくれる葵を嫌いになるなんて事は無く、むしろ小さい頃は男だと思っていたことによる少しの罪悪感と、女子でありながらこれだけのイケメン面が隣にいるという少しの劣等感を除けば………………
なんてめんどくさい事を考えているわけもなく
「(胸が背中に当たってるうううぅぅ!ひいいいいいいぃぃ!)」
感情のキャパオーバー。
いつもの日常では全く出すことが無いであろう声は平塚の脳内で響きまわっていた。
「慣れた」の単語には文字通りの意味なんか全くなく、内心のドキドキを隠そうとするあまり、この『内心を隠す』という動作に集中するために全神経を使った結果……
「……ねぇ」
「どうした」
「ページめくるの早くないかい?」
「あ、あぁ。すまん」
「…ふーん」
ぎゅ
「葵さん!?」
「慣れてるなら」
もうちょっとくっついても大丈夫だよね
ちなみにではあるが
漫画を読み終わる頃には、隠した平塚も攻めた葵も
「「…」」
お互いに気まずい雰囲気になってしまったのは、言うまでもあるまい。
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