第12話 「構って。」
「なあ平塚くん?」
「なんだ葵ちゃん。」
「構って。」
休日であるはずの土曜日曜は、学生にとって救いの日であり、身体を休めたり娯楽に熱中したり惰眠をむさぼるできる日なのである。しかし、平塚はせかせかと勉強をしていた。それに比べて葵は既に教科書ノート筆記用具を締まっている。
「いつまで私を差し置いて勉強をしているつもりなのさ。」
「今日は勉強会の予定なんですがね?」
「あー暇だ暇だ」
「じゃあもう帰れよ……」
それは話が変わってくる、言う葵は持ち前のイケメン面をいかんなく無駄使いした決め顔をした。
それを見た平塚はドキっとしなかったわけでもないが、それ以上にいつもの事だという認識が大きく働き、ほとんど平常心だった。
表情一つ変わらなかった平塚を見て、葵は少し不機嫌になった。
「平塚は、最近私の扱いが雑になってきてないかい?」
「そうでもないだろ。」
「いーや、雑だね。最近は『一緒に○○しよう?』って言っても素直にやってくれなくなってきてる。」
「むしろ最終的には付き合ってるんだから丁寧だろうが。」
「最終的にやってくれるなら抵抗する必要ないだろう!」
この掛け合い中も、平塚はたまに目線を葵にやる程度で、ほとんどはノートに目がいっている。
「第一、勉強会でもいいから俺の家に入りたいって言ったのお前の方だろ?」
「勉強程度に私の魅力が負けるはずがない。」
「好きと嫌いで言えば葵に軍配が上がるが、今はそれ以上に優先順位があるんだ。課題というな。」
「ちょっとだけ!ちょっとだけでいいから構って!」
「なんなんだこのうるせえ17歳児は……あ、そうだ。葵、ちょいとこっちに来なさい。」
トントンと自分の横のスペースを叩く平塚。
「構って構、ん?どうした?」
そしてほぼブレイクダンス状態だった葵がハイハイをしながら目標地点に向かう。
「勉強を教えてくれ。ここと、ここだ。」
「やり方がわかんないって事?」
「どうして答えと違っているのかがわからん。」
「ちょっと見せて」
(計画通り)。平塚は内心ほくそえんでいた。
葵を静かにするには、最適の手段。
それは神の一手だった。
しかし、忘れてはならないことがあった。
「うん。平塚間違っていた原因はね……」
問題の解説をしてくれる葵。
そう。最近あまり見ることがなかった、マジモード葵の姿を見ることになるのだった。
そう、この幼馴染。
顔が良いのである。
「……って事なんだけど。あれ、平塚聞いてた?」
「あ、あぁ。すまん、もっかい頼む。」
「わかった。じゃあもうちょっと嚙砕いて説明するね。」
自然な爽やか笑顔に、見惚れてしまった。
ちなみに説明は追加でもう一回してもらった。
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