第7話 「これ見よう。」

「平塚。これ見よう。」


「やめよう、それ怖いやつだろ?」


「ご明察だ、よし見よう。」


 真っ黒な背景に赤い文字で「輪」と書かれたDVDを開いて中身をプレイヤーに入れようとする葵と、それを阻止する平塚。熱い攻防は、葵の取り出したスマートフォンの画面で決着がついた。


「おいおい、これがわかるかい?」


「なんだ?『都宮葵ファンクラブ』……ファンクラブ!?」


「そう。このグループには入っていないが……もしここに一緒に寝た時の写真を送ったら、一体どうなってしまうんだろう。なぁ?平塚」


「くそっ!学校での尊厳か、お前に恥をさらすか。どっちか選べって事か!」


 好きな方を選ぶがいいさ!。と高笑いする葵は上機嫌だ。


 逆に平塚の顔は真っ青だ。どちらに転んでも良いことがない。


 しぶしぶ選んだのはホラー映画。一時的な死か、後に残る死のどちらを選択すべきかは明白だった。


「賢い選択だ。平塚、隣においで。」


「テレビの真ん前じゃねえか!この悪魔!」


「近くに私がいれば、怖さも薄れるだろうと思ったんだよ。」


「その配慮ができるなら、まずこんなの見せるんじゃねえ!」


 と言いながら、葵の隣に座る平塚。


 始まる……始まってしまう。


 今……リモコンが……押され……


 ない。


「おい葵。」


「な、ななななんだい?」


「始めろよ。」


「ま、まあもっとホラー嫌いの平塚をじっくりと嬲ってやろうと。」


「お前ってホラー得意だったっけ?」


「…」


「…」


「……得意だ。」


「よしじゃあ見るか。」


「だだ、ダメだ!やっぱりやめた!今やめた!」


「いーや見るね!絶対見るね!」


 熱い攻防第二回戦。攻守交替。


 だが、ゴングはリモコンである。


 ッピ


「「あ。」」




「ぐすっ……ぐすっ……」


「おい、泣くなって。」


「だって、お化けがいきなりテレビに……」


「だって、ホラーだしな。」


「……なんであんなの見ちゃったんだろ。」


「次からはやめてくれよ?」


「……うん。」


「はぁ、お茶飲むか?」


「……飲む。」


「じゃあ取ってくるから、ちょっと待ってろ。」


「い、行かないで……」


「どうせいっちゅうねん。」


「じゃあ一緒に行こ。」


「はいはい。」


「手。」


「……はいはい。」




「あ、おばけ。」


「きゃああああああああああ!!!」

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