第5話 「……一緒に寝よ?」

「平塚……一緒に寝よ?」


「断る。」


「なんでさ!」


 平塚一家からも好評だった美味しいハンバーグ。これには流石に胃袋の一つや二つを握ったと思っていた葵は、自宅から持ってきた枕を投げる。が、遭えなくキャッチされてしまった。


「なんでもクソもあるか……」


「いったい何がそんなに不満なんだい。顔もいい運動もできる料理もできる……拒否しない理由がないだろう?」


「それとこれでは話が違うだろうが!」


 枕を投げる平塚。


 葵の顔にヒットすると、そのまま顔を埋めながら後ろに倒れて行ってしまった。


 もちろん倒れてもベットなのでケガはない。


「もっと可愛いパジャマにしたら受け入れてくれたのかな。」


「そういう問題でもないんだが……」


「じゃあなんで。」


「これでも俺は男なんだぞ?幼馴染だからって油断してると……」


「別に君なら、いいよ」


 場に沈黙が流れる。


 平塚の目は唖然として葵を見つめているが、沈黙を作った張本人は目を明後日の方向に向けている。


「冗談でもそういうことは言うな。」


「冗談じゃないよ。」


「……そうだ。なあ葵、本当にいいのか?」


「うん……ひゃうん!」


 ベットに倒れていた葵に覆いかぶさる形で、床ドンを繰り出す平塚。間にあるのは枕だけ。そう、超絶至近距離である。


「さ、最初は優し」


「とまあこんな感じで、男は狼だという言葉もあるようにだな……葵?どうした?」


「…」


「葵さん?」


「ばか。」


「急になんなんだ?……まあ男の怖さが分かっただろ?」


「……襲われるー!」


「だぁぁぁ!いきなり何言ってやがる!」


「本当の事だろう?」


「ちげーよ!お前があんなこと言うから」


「助けてー!」


「何言ってんだお前!やめんか!」


「……やめて欲しいかい?」


「即刻。」


「じゃあ、わかるだろう?」


「……貴様、諮ったな?」


「…………もちろんさ。」


 もちろん嘘だ。


「さぁ、あとはもうわかるだろう?入って来なよ。このベットにさ!」


「くっ。なんて卑怯な奴だ……まあ俺のベットだけどな。」


「フッフッフ、騙される奴が悪いんだぜ……まあ君のベットなんだけどね。」


「はぁ……家でのカーストは下げられたくないしな。じゃ、お邪魔しますよっと。」


「はい、いらっしゃい……って、え!?」


 意外とあっさり入ってきて焦る葵の夜は、まだもう少し続く。

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