第2話 「一緒に食べようよ。」

「平塚。一緒にお昼食べようよ。」


「いつも一緒に食べてんだろ。」


「ムードだよムード。さっさと屋上に行こう。」


 屋上。

 わざわざ移動してまでそこで食べたいのか?と思わないこともないが、学校という閉鎖的な空間でグラウンドよりも校内にあるにも拘らず、圧倒的な解放感が得られる唯一無二の場所。


「人は……いないようだね。」


「まあ居たとしても関係なく食うがな。」


「今日は君の番だったか。」


「心配すんな、ちゃんと持ってきてる。」


 二日に一回荷物が重い日があると困ったもんだ。と言って取り出した弁当箱は二つある。


 定位置であるフェンスに寄りかかって、葵に弁当を渡す平塚。


 同じ弁当箱だが、色が違う。


 赤と青で使い分けだ。


「さてさて、今日の中身はっと。」


「どうだ。ご要望通り、卵焼きは硬めだぞ。」


「以心伝心がこんなに嬉しかったことはないね。」


「弁当でそれだけになれるなら、何でも幸せだな。」


「もちろんさ。君と一緒ならね。」


 狙い通りの一撃。


 相手の突っ込みを完璧に読んでのこの一緒なら発言。


 しかし、相手は微動だにしない。


「……何かいう事は無いのかい?」


「あ?なにが。」


「私は君と一緒ならなんでも幸せだって言ったんだが。」


「ああ、そういう。……俺もお前がいてくれるだけでうれしいよ。」


「ッ___!!!」


「これで満足か?」


「はぁ、はぁ……大丈夫だ。満足した。」


「そうか、じゃあさっさと食え。」


「……平塚。」


「なんだ」


「あーん」


「急にどうした。」


「あーん」


「鳥の雛の真似か。」


「あーん!」


「……はぁ。何が食べたい。」


「卵焼きがいいなぁ。」


「……はい、あーん。」


 ぱくり


 もぐもぐ


「うまいか。」


「……う、うん美味しい。」


「照れるくらいなら最初からやんなよ……」

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